79曲目 本音 ページ29
「逃げちゃ駄目だよ？」
しかし酔っ払い志麻に回り込まれてしまった！
おお神よ、これは敗北確定イベントなのでしょうか。
志麻さんに手首をがっしりと掴まれ、それを振り切ることができないのは目に見えている。
頭を回しながら近づいてきたうらたさんは、気付けばすぐ目の前にいた。
ガッ、と力強く顎をうらたさんの手で固定され、少しずつ彼の顔が近付いてきた。
酔っているためか普段より力強いそれに動揺してしまい、同じく酒が回っている私は何をすることもできなかった。
彼の悪戯に色っぽい表情が、私の中の何かを疼かせる。
唇が、重なる直前。
ファーストキス、なるものが今、奪われようとしたその時。
「Aの馬鹿ぁぁぁぁっ！」
先程の色っぽい笑みは何処へやら、泣きながら叫び出すうらたさん。
何がなんだかついていけず、口をあんぐりと開け見ることしかできない。
「好きじゃないわけないじゃん俺も好きだよ馬鹿ぁっ！言っとっけど俺は恋愛感情でお前のこと好きだからっ！」
うらたさんは私の胸に顔を埋め、泣きながら尚も饒舌に喋りだす。
「俺だって我慢してたし！皆好きだから俺は手を引いて見守ろうと思ったし！リーダーだから！
でも！俺だってお前のことちゃんと好きだから我慢できないんだもん！」
観覧車の中でも語られなかった本音。
私には家族、と言ってくれたけど、本当は自分だってこんな悩みを抱えていて。
やっぱり彼は、思いやりのある人だ。
うらたさんの頭を撫でようと、志麻さんに掴まれていない方の手を上げると、その手をも今まで傍観をきめていた筈の志麻さんに掴まれる。
そして次にうらたさんが顔を上げた時は、もう泣きじゃくる子供ではなく、大人の男の顔に戻っていた。
「…だから」
その相手に有無を言わさない鋭い瞳が、私の目を釘付けにし、彼は私の耳に口元を寄せ呟いた。
「もう遠慮とかしないから。
お前の隙を今まで戒めてきたけど、これからは隙を利用して本気で襲う」
その落ち着いた吐息混じりの声に、脳が溶かされるように思考が鈍くなる。
目と耳で、私の頭、理性は彼に支配されていく。
「俺の事、忘れんなよ？」
私の手首を拘束していた志麻さんの指が、私の手のひらを軽く擦る。
その弱々しいタッチに、却って私の手は、身体はくすぐったくなり、もどかしさから震えてしまう。
それを見た志麻さんは口元を歪めて笑った。
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Shooto_Keeki(プロフ) - たまたま見つけて読んでました。もう本当に最高でした、最後の展開で泣きそうになっちゃいましたよｗ (2019年9月22日 19時) (
レス) id: 7c93d27e64 (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 時雨さん» 最後までお読みいただき、ありがとうございました！涙だなんて、そんなに感動していただけてとても嬉しいです…！ (2019年1月31日 9時) (レス) id: 56a129691b (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - とても凄くて感動しました…!!(語彙力低下)最後涙が…;;素敵な作品、読ませていただきありがとうございました…!!!!!! (2019年1月31日 0時) (レス) id: 274b7ae121 (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 夢愛-ゆあ-さん» 長編になっていますが、最後までお読みいただきありがとうございます！泣いていただける程感動してもらうことができ、私もとても幸せに思います。わざわざコメントまでいていただき、ありがとうございました！ (2019年1月7日 22時) (レス) id: 56a129691b (このIDを非表示/違反報告)
夢愛-ゆあ-(プロフ) - とても面白くて一気読みしちゃいました…！最後の方は感動で涙が止まりませんでした…(涙)実は小説を読んで泣いたのって初めてで自分でびっくりしてます(((それほど素敵な小説に出会えて幸せです！今から番外編も読ませていただきます！長文失礼しました！！ (2019年1月7日 19時) (レス) id: b3b95c5e04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羽飛 | 作成日時：2018年11月14日 19時
