悪夢の再来 ページ28
.
「"──じゃあ今回まとめた話を社内チームで再度検討しますね。手応えはあるので、概ねこの内容で進むと思います"」
「分かりました。色々我儘言ってすみません…」
「"謝らないでください。僕たちはこれが仕事ですし、カツドウメイさんを応援したくて携わっているんですから！それでは、連絡お待ちください"」
「…はい、ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします」
マウスカーソルを通話終了ボタンの上に乗せ、クリックひとつで画面が閉じる。通話のネタにと色々開いたファイルもひとつひとつ閉じ、徐々に思考を休息モードへと移行していった。そうしてデスクトップが映し出されたその時、視界に違和感が生じる。
「(物が見えづらい…画面の見過ぎかな)」
前々から感じていた見えづらさが増しているような感覚。連日予定を詰めすぎたのかもしれないとひとり反省していると、インターフォンが鳴り響いた。心当たりのある訪問を思い出し、操作パネルに駆け寄る。
「はーい」
「"お疲れさん。連絡した通り、お裾分けしに来たで"」
「ありがとう、今開けるね」
予想通り、画面に映っていたのは兄さん。お互い一人暮らしでの自炊をする中で、時折こうやって作り過ぎた食事を渡しに来るのがいつからか日常のひとつになっていた。オートロックを解除した後、内扉で迎える為に玄関へと向かう、その時。急に身体から力が抜け、膝から崩れ落ちるように玄関への廊下で倒れこんでしまう。何事かと脳が理解するよりも早く視界は朧気に、そして光を失っていった。
「(なに、こ…れ……)」
『──……、』
「…ぁ、」
"この感じ、
既視感による恐怖の感情が込み上げるよりも前に、私の意識は暗闇へと放られてしまった。
──────────────
─────────
────…
「──…A？入るで」
いつもならすぐに開く扉が一向に動く気配がない。オートロックを解除した後に電話でもあったのだろうかと思ったが…流石に遅すぎる。少なくとも何かしら俺に対し合図や連絡をしてもいいのだが…嫌な予感が脳裏を過ぎり、扉に手を掛ける。鍵の掛かっていない無防備な扉を開けた先の視界に飛び込んできたのは──
「！？Aッ…！！」
廊下に倒れた、Aの姿だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 385人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にゃむ吉 | 作成日時：2022年6月11日 16時
