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「すみません、今帰り…ま……」
「……、」
「あ…あろま、さ…」
視線を上げた先にいたのは予想外の人物。あぁ、どうして
「…おい、顔隠すなブス」
「ぶ…？！流石に言い過ぎじゃないですかねえ！？」
「素直にならないお前が悪い」
"あの人達"が使うものと同じ言葉であるはずなのに、彼が口にした言葉の刃は痛くない。その違和感の理由を理解するよりも早く、あろまさんは隣の椅子に座り怪訝な色で視線を合わせてきた。
「何があった」
「え…あ、いや、別…に……」
「…はぁ、聞き方変える。お前が今泣いてんのは、
「！？ちがっ…！」
「……じゃあ何だっていうんだ」
いつもの気迫がない息遣いは、まるで"心配だ"と言わんばかりの仄暗い色を纏っている。視線を逸らし一向に言葉を続けない私に対し、彼は片手で私の頬を掴み、無理やり視線を合わせた。
「ちょ…！」
「抱えてるもんさっさと吐き出せ。そんなんじゃ帰れねえだろ」
「で、でも…」
「でもじゃねえ。つべこべ言わずさっさと吐け」
「…訳の分からないこと、たくさん話しちゃいますよ？」
「別に…いつもの事じゃん」
「……ほんと、一言余計なんだよなぁ…」
前世のことを話したところで、ただ困惑するだけだろうに。いくらでも逃げる言い訳は浮かぶけれど、多分この人はどれもこれも納得しないだろう。口が悪くても、怖い顔をしていても、横暴な口頭をしても…大事な秘密を共有する相手として、こんなにも芯をしっかり持っているひとになら。グルッペンの助言通りに…一歩前に進むのも、ありなのかもしれない。
「───昔"彼ら"の事を…その、なんというか……裏切ったことが、あるんです」
「…へぇ、意外」
「…当時とある組織に所属していた時、私たちの居場所が思わぬ外的要因で崩壊しそうになって。それを解決するために、彼らには内緒でその害を取り除く計画を立てたんです。そうでないと、その外敵を撃退することが出来ずに…場合によっては、誰かの命が奪われてしまっていたので」
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作者名：にゃむ吉 | 作成日時：2022年5月18日 11時
