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夏祭り当日。待ち合わせ場所に現れたAは下ろし立ての浴衣を纏っていた。髪も美容院でセットしてもらったのだろう、涼しげに髪を纏め可愛らしい雰囲気が増している。ただそこに追い打ちをかけたのが…浴衣の配色であった。どんな色でも似合うとは思うけれど…だからと言って淡い黄色が主となったデザインであることは、どう考えてもあの男が仕込んだ結果だろう。自分で選んだならまだしも、仲間内に準備されるこの気恥ずかしさ。Aに八つ当たりするわけにもいかず、火照る頭を振り、彼女に悟られる前に祭りの中央部へと進んでいった。
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────…
「(流石に混んできたなぁ…)」
「──…がさ、」
「!」
「──ランキングに上がってたの見た?」
「見た見た!あとその前の動画もさ…」
屋台の食べ物や的当てゲームなどを満喫しているとあっという間に時間は過ぎ。打ち上げ時間に近づく毎に徐々に人だかりが増していき、すれ違う人や隣を歩く人との距離が狭まってきた。そんな中聞こえてきたのは女子中高生らしき集団の会話。ドキッとする内容に恐る恐るそちらを見やれば、彼女らの鞄には見覚えのあるグッズが。顔を隠している私はともかく、シャオちゃんの素性が知られてしまったら…不安が込み上げ、彼の方へ視線を移したその時。
「…え」
「人混みすごいなぁ…歩くの速かったら言ってな?」
「あ…うん、ありがと…」
空いた方の手が暖かな感触に包まれ、そのまま身体ごと軽く引き寄せられる。さも当たり前のように繋がれた手は私のものとは違い、少し大きくそしてごつごつとしていた。別に初めて異性と手を繋ぐわけでもないのに、この状況を脳が理解した途端微かに動悸が高まり言葉に詰まってしまう。人混みから離れよう、そのひと言すら口に出来ず。気づけば不安は妙な期待に塗り替えられ、無言のままシャオちゃんに手を引かれ道を進んでいた。
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───…
「うっし、ここなら穴場やろ」
「…よく見つけたね、こんな所」
「会社の人でこの辺に詳しいひと居ってな。教えてもらったんや」
屋台が並ぶ人通りから少し離れた林の中。たどり着いた先には地元のひとしか知らないであろう高台があった。運よくまだ誰も来ておらず、まるで私達専用の空間。すると私達の到着を待っていたかのように遠くから閃光と甲高い音が届いた。
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にゃむ吉(プロフ) - nnさん» コメントありがとうございます!分かる人には分かるようなネタを各所に散りばめているので、もしよろしければ引き続き読んでくださると幸いです。 (2023年1月15日 8時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
nn - 実際の誕生日と一緒なことに驚きました! そしてお話も面白いです (2023年1月14日 20時) (レス) @page1 id: d2a3e7d3b4 (このIDを非表示/違反報告)
にゃむ吉(プロフ) - 1さん» コメントありがとうございます。人物名については私なりの意味を込めて名付けており思い入れがあるため、そのような感想をいただけてとても光栄です!これからもまだ伏せているものもありますので、よければ引き続き読んでくださると幸いです。 (2022年3月26日 7時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
1 - 名前の由来を知ると、これぞ伏線って感じがしてとてもワクワクしました。なるほどなぁとなりました。 (2022年3月26日 0時) (レス) @page19 id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃむ吉 | 作成日時:2022年3月12日 12時