□ 23 ページ23
.
「"もしもし？"」
「Aちゃん、ちょっとそこで立ち止まって！？」
「"え？なに、一体どうし…た……"」
彼の方もスピーカー状態になってたおかげで、Aの声がはっきりと耳に届いた。二人それぞれ会話の主導権を握ったことを確認し、再び視線を窓の外へ戻す。かなり離れていたように思えた距離もあっという間に縮まり、十分に目視できるはず。そう、お互いの事を
「"──おいトン氏、さっきから何の話かさっぱりなんだが？"」
「…え？」
この反応には既視感があった。Aがトントンの事を覚えていなかった時の、あの何の悪意もない声音。純粋に問うている事が伝わってくるからこそ、グルッペンの今の状況はすぐさま皆の脳内で理解できていた。たとえそれが、受け入れがたいものだったとしても。すると今度は、もう一方の携帯から鬱先生の様子を伺うAの声が再び耳に届く。
「"？鬱先生？"」
「──あぁすまんすまん、こっちの話や。その、電話したのは…今日のお昼一緒にどうかなと思ってな」
「"お昼？えっとこの後は……あっごめんなさい、先約が…"」
ショックな様子を悟られまいと、一息ついた後に言葉を返す鬱先生。声音こそ普段通りだけど、彼女には見えない彼の表情は悲壮感に染まっておった。幸いにもAには気づく様子もなく、会話を続けている。
「あー、ならしゃーないなぁ…ってまさかそれ、男やないよな？」
「"へ？…ふふ、いやいや女の子ですよ、同級生の。そうだ、もうすぐその子に会うんで、同席してもいいか確認してみましょうか？"」
「ほんま！？いや〜そんな贅沢やと後で罰当たりそ…」
「"──！"」
「"あ、ちょうど来ました──
「…は？」
Aが来た方向、グルッペンとすれ違うように新たに現れたひとりの女性。声のする方へ向くAの表情は明るく、一見仲の良い友人のようだ。しかしどこか既視感のある面影は、彼女が口にした呼び名によって俺達の記憶から引きずり出された。髪色こそ違うけれども、間違いない。
「アリ、ス…？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 437人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にゃむ吉(プロフ) - 狛狐さん» メッセージありがとうございます！前作の頃も、書いている途中は読み応えのあるものがつくれているのか不安だったのですが、涙する程の作品となったことをとても誇らしく思います。ぜひまたの機会にご感想伺いたいです！今後ともよろしくお願いいたします (2021年11月30日 7時) (
レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
狛狐(プロフ) - 儚さと力強さを感じさせてくれるとても素敵なお話で終始涙が止まりませんでした…今も泣いてます…長々とすみません、、もっと沢山素敵ポイントをお伝えしたいのですが文字数的にもここで我慢しておきます…これからも応援させて下さい。更新楽しみにしております (2021年11月30日 3時) (レス) id: f8a7d6fbdd (このIDを非表示/違反報告)
狛狐(プロフ) - 最初は転生前（前作）の題名に惹かれ読み始めたのですが稀に見る良作過ぎて一気にここまで読み進めてしまいました……文章の組み方や言葉遣い、表現の仕方などがとても心に刺さり1話を何度も読み返してしまうほど大好きです。なによりも内容が素敵すぎる…… (2021年11月30日 3時) (レス) @page21 id: f8a7d6fbdd (このIDを非表示/違反報告)
にゃむ吉(プロフ) - とぴあさん» メッセージありがとうございます！涙流されるほどのインパクトをつくることができ、とても光栄です…まだまだ先は長いのですが、読んでくださった分を無駄にしないよう、より気持ちを込めて執筆しようと思います。引き続きよろしくお願いいたします！ (2021年10月12日 7時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
とぴあ - 一気に読み進めていたら、思わず涙が出てきてしまいました……。自分でもびっくりしているのですが、きっと作者様の文章が素晴らしかったからです。読んでいてこんなに幸せな気持ちになれる作品は初めてです。続編でも更新ぜひ頑張ってください。 (2021年10月12日 0時) (レス) @page5 id: 9545a37ffd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にゃむ吉 | 作成日時：2021年10月1日 17時
