【d!】アンモビウムを抱えた君へ 2

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「ご機嫌はいかが？アリス様」
「…あんたの顔を見たら体調悪くなったわ」
「あはは！そっちの方がいいね、接し(扱い)やすいや」


薄暗い通路に淡い光が灯る。外界から一切遮断されたこの牢屋に現れたのは、胡散臭い笑顔を浮かべたこの国の外交官様。言葉の節々に纏う性格の悪さと相まって、正直ここの幹部連中のなかでトップクラスに苛立つ表情(かお)である。不愉快な様子を隠す事なく、牢屋越しに睨みつけた。


「今更何の用？そもそも死刑の執行も…拷問のひとつすらないのは、何の風の吹き回し？」
「それは勿論…うちの優秀な参謀の提案を聞き入れた、総統様直々のご判断やで」
「…は？」
「Aちゃんの事、もう聞いとるやろ？」
「…えぇ。彼女の飼い犬達から、ね」


何を当たり前の事を、とでも言いたそうに言葉を返す男。その優秀な参謀様とやらは、もうこの世にいないと話には聞いていたが…それはそれとして、何か様子がおかしい事は明白だった。ただでさえ不快で腸が煮えくり返りそうな感情を抑え、男の言葉を待つ。


「じゃあもう誤解解けていると思うけど、あの子ほんま賢い子でな？君の情報を仕入れてから、たった数カ月で君の事を全部調べとったで」
「……そんなわけないでしょ。私はS国の所属よ？ただでさえA国とS国の繋がりを見定めるだけでも、時間を労するはず」
「それがなぁ…彼女達参謀班の隠し部屋案内してもらったんやけど、ほんまに全部やったで。…君が生まれてからの経歴や境遇、交友関係も何もかも」
「はっ。そんなでたらめ、誰が信じ…」


どうせ私を弄ぶ妄言だろう、そう思ったのもつかの間。牢屋の柵越しに渡されたのは、文字がびっしりと書かれた書類であった。一体こんなもの渡して何を、そう問い返そうとするよりも前に"それ読んでみな"と諭される。その態度が気に食わないものの、暗がりに長くいるせいで見づらい視覚をどうにか叩き起こし目を通す。しかしその直後、私の思考は驚きによっていとも容易く真っ白になるのであった。

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