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気分のままに俯いてしまうと、腹の底から良からぬ物がこみ上げそうになる。自業自得なのは百も承知なんやけど、それでも酒瓶を手放すことが出来なくて。そんな時仲間(みんな)が…彼女が居れば、こんな不自由さもいとも容易く取っ払ってくれるだろうに。


『…それでね、ロボロってばその後大慌てしちゃってさ!持ってたインカムも台無し』
『うわぁ…相変わらずの執着だねぇ…』
『Aちゃんはそういう相手おらんの?ほら、幹部連中見てみ、良い男ばっかだよ?』
『私?えー…そう言われても、私にはもったいないよ』
『そう??むしろあの男連中のひとりふたり引き取って欲しいよ〜』
『何で複数系なのかな…大丈夫だって、そのうち見つかるよ。だってあいつら何だかんだ良い…いや待って嘘ついた、変態の集まりやわ』
『それな』
『…こりゃ皆の春はだいぶ先だねぇ』


自己肯定感の低い君は、まさか自分が好意を持たれているだなんて夢にも思っていないよね。大先生やロボロあたりなんか、明らかに分かりやすかったよ?羨ましい反面、ひとりの軍医として、友人として、仲間として…君を慕うひとりとして、その自己犠牲の塊をどうにかして治したかったんだ。ねえ、君はこんなにも愛されとるんよ?だからさ、今度はもっと甘えたってや。


「俺がもっと有能な医者だったら…未来は変えられたんじゃないかなって。考えたくもないのに、そればっか考えちゃって。そしたら空いた酒瓶がいっぱいでさ〜」
「…こんなんじゃ皆に…Aにも、怒られちゃうね」
「…だねえ」


俺達の間を夜風がすり抜け、面布がふわりと靡いた。するとちょうど雲間から差し込む月明かりが強まり、久方ぶりに遮るもののない眼がその景色を写す。明暗はっきりと分かれ城下町に光と影を作り出す様は、未だかつて見たことのない、綺麗な風景だ。思わず口にしようとした瓶も、その手ごと下ろしてしまう程に見惚れている。


「…こりゃ凄いね」
「うん。これが…Aが守ってくれたものの一つなんだよ」
「そっか……いつまでもうかうかしていられないね」


捲れた面布を元の位置に戻し、瓶に残ったお酒を一気に飲み干した。ひとらんらんは俺の行動にちょっと驚いたようだけど、飲み終えた後はどこか安堵した様子。ゆっくりでもいい、きっと俺達なりに進む事が大事なのだから。



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にゃむ吉(プロフ) - アイリさん» コメントありがとうございます。主人公の心情・状況を丁寧に表現したくこのような手法をとりました。少しでも楽しみのひとつになれたのなら幸いです… (2022年6月5日 17時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
アイリ - ちゃんと日記のとこ漢字かけなくてひらがなになっていくの好きやわ… (2022年6月4日 22時) (レス) @page20 id: 018c1614bc (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - にゃむ吉さん» 了解です。意図的でしたのなら、口を挟んで申し訳ないです。これからも応援させていただきます。頑張ってください( *˙ω˙*)و グッ! (2022年3月19日 18時) (レス) id: 00820fe97a (このIDを非表示/違反報告)
にゃむ吉(プロフ) - ウイさん» メッセージありがとうございます。指摘いただいた内容については当初は意図した表記だったのですが、読み直すと確かに違和感もありましたので伝えたいニュアンスを含め修正しました。引き続きよろしくお願いいたします。 (2022年3月19日 7時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 気になったのでご指摘させて頂きます。ps(分かりますか?)のセリフで『あり?』という物がありまして、『あれ?』では無いのかなと思いました。何か意図的にやっているなら申し訳ないですが気になったのでコメント失礼しました。今後も頑張ってください (2022年3月19日 7時) (レス) @page32 id: 00820fe97a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にゃむ吉 | 作成日時:2021年7月16日 16時

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