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「………なぁエミさん。俺…どうしたらええんやろ」
「…そうですね。私も…正直、迷っています」


部屋の中央に佇んだまま、こちらに背を向けるゾムさん。グルッペンさんの口ぶりから察することはできていたものの、やはり現実を目にすると堪えきれないものがある。きっと彼女なりに、けじめをつけた結果なのだろう…自分達と同じ部屋の作りのはずなのに、殺風景なこの部屋にいるとどこか異世界に迷い込んだかのような錯覚に陥ってしまいそうになる。けれど、私もゾムさんも、彼女との思い出だけは風化させてはいけないはずだ。


『…これですか?えっと…あぁ、これは以前教えたこの単語の対義語ですね』
『へぇー…やっぱりエミさんは物知りだね』
『フフン、でしょう!』
『…そのイキるとこが無ければなぁ…あ、じゃあこの意味は?』
『はいはい、私の手にかかればそんなもの……って、Aさんこの言葉をどこで…?!』
『え?この前グルッペンがお茶会で…え、エミさん?笑顔が怖いよ?』
『……なんでもありません。Aさんは覚えなくて良い言葉なので、それだけ分かってもらえれば』
『アッ、ハイ』


教師と生徒、その逆も然り。お互いの得意分野と苦手分野を補うことで、幹部としての責務を一層担うことができた。彼女も元からの聡明さがより成長したように思える。でもそうやって助け合っていたのに、大事なときに、彼女が苦しんでいるときに、私は何の力にもなれず…けれど今度は、そんな後悔をしたくない。


「少なくとも…私ひとりだけでは解決できないと思うんです。だから、一緒に探しませんか」
「……Aが残してくれたもん、ちゃんと探せるんかな」
「勿論。私達だけではなく…皆さんも一緒なら、大丈夫です」
「…それなら、ええな」


開放されていた部屋の窓から風が吹き抜け、彼のフードを撫でるように靡かせる。長い髪に隠れながらも、漸く顔を上げたその表情には、久方ぶりに楽しそうな色が見えた。それにつられ、私もつい目を細めた。これなら、これならきっと…私達は前に進めるはず。



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にゃむ吉(プロフ) - アイリさん» コメントありがとうございます。主人公の心情・状況を丁寧に表現したくこのような手法をとりました。少しでも楽しみのひとつになれたのなら幸いです… (2022年6月5日 17時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
アイリ - ちゃんと日記のとこ漢字かけなくてひらがなになっていくの好きやわ… (2022年6月4日 22時) (レス) @page20 id: 018c1614bc (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - にゃむ吉さん» 了解です。意図的でしたのなら、口を挟んで申し訳ないです。これからも応援させていただきます。頑張ってください( *˙ω˙*)و グッ! (2022年3月19日 18時) (レス) id: 00820fe97a (このIDを非表示/違反報告)
にゃむ吉(プロフ) - ウイさん» メッセージありがとうございます。指摘いただいた内容については当初は意図した表記だったのですが、読み直すと確かに違和感もありましたので伝えたいニュアンスを含め修正しました。引き続きよろしくお願いいたします。 (2022年3月19日 7時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 気になったのでご指摘させて頂きます。ps(分かりますか?)のセリフで『あり?』という物がありまして、『あれ?』では無いのかなと思いました。何か意図的にやっているなら申し訳ないですが気になったのでコメント失礼しました。今後も頑張ってください (2022年3月19日 7時) (レス) @page32 id: 00820fe97a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にゃむ吉 | 作成日時:2021年7月16日 16時

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