今日:142 hit、昨日:25 hit、合計:195,501 hit
小｜中｜大
俺の言葉にぱっと視線を合わせるAちゃんは随分と間抜けな顔を晒していた。その無防備さに異性の心を擽るものがあることを、彼女は知らないのだろうか。罪深い奴やんなぁと苦笑を隠しながら言葉を続けた。
「Aちゃんの歌声は他の誰にも劣らない、想いが籠った魅力があるんよ。だからきっと軍や国、きっとその先の和平にだって良い影響を齎してくれるはずや」
「………大げさだよ。だって…無能 には無縁だもの」
視線を外してしまうも、口角が下がることは無かった。夜風に靡く髪の毛が彼女の表情を霞むように隠してしまう。吸い殻を携帯灰皿に捨て、空いた手でその顔を覗こうと伸ばしたその時、背筋を寒気が走ってきた。
「はっくしゅん！うう、流石に上着無しは寒かったか…」
「疲れているんだろうから、身体冷やさないうちに早く部屋に戻った方がいいよ」
「せやなぁ…んならほら、Aちゃんも部屋戻ろ？送ってくで」
「…いや、私はもう少し外の空気吸っていたいから、ここに残るよ。…大丈夫、すぐ戻るから」
「んー…なら、お言葉に甘えて。おやすみAちゃん」
「おやすみ、大先生」
髪を耳にかけ、再び視線を合わせてきた彼女には愁いを帯びた色は無かった。勘違いしそうになる思考を律し、手摺から背中を剥がし歩を進める。屋内に入り、その先の下り階段へ足を着こうとしたその時…
「…ごめんね」
風にのって背中に届く小さな声。それは何に対しての謝罪だったのか、聞き返す勇気は俺にはなかった。立ち止まって振り返りそうになる気持ちをぐっと堪え、その場を離れる。そうだ、明日久しぶりに城下町へデートに誘ってみようか。彼女の好きそうなアクセサリーや洋服を見に行こう。そんな事を考える俺は、今思えば随分と平和呆けをした頭をしていた。
何故なら…それが俺が耳にする彼女の最後の声 になるだなんて、露程も考えていなかったのだから。
□ 23 ページ23
.
俺の言葉にぱっと視線を合わせるAちゃんは随分と間抜けな顔を晒していた。その無防備さに異性の心を擽るものがあることを、彼女は知らないのだろうか。罪深い奴やんなぁと苦笑を隠しながら言葉を続けた。
「Aちゃんの歌声は他の誰にも劣らない、想いが籠った魅力があるんよ。だからきっと軍や国、きっとその先の和平にだって良い影響を齎してくれるはずや」
「………大げさだよ。だって…
視線を外してしまうも、口角が下がることは無かった。夜風に靡く髪の毛が彼女の表情を霞むように隠してしまう。吸い殻を携帯灰皿に捨て、空いた手でその顔を覗こうと伸ばしたその時、背筋を寒気が走ってきた。
「はっくしゅん！うう、流石に上着無しは寒かったか…」
「疲れているんだろうから、身体冷やさないうちに早く部屋に戻った方がいいよ」
「せやなぁ…んならほら、Aちゃんも部屋戻ろ？送ってくで」
「…いや、私はもう少し外の空気吸っていたいから、ここに残るよ。…大丈夫、すぐ戻るから」
「んー…なら、お言葉に甘えて。おやすみAちゃん」
「おやすみ、大先生」
髪を耳にかけ、再び視線を合わせてきた彼女には愁いを帯びた色は無かった。勘違いしそうになる思考を律し、手摺から背中を剥がし歩を進める。屋内に入り、その先の下り階段へ足を着こうとしたその時…
「…ごめんね」
風にのって背中に届く小さな声。それは何に対しての謝罪だったのか、聞き返す勇気は俺にはなかった。立ち止まって振り返りそうになる気持ちをぐっと堪え、その場を離れる。そうだ、明日久しぶりに城下町へデートに誘ってみようか。彼女の好きそうなアクセサリーや洋服を見に行こう。そんな事を考える俺は、今思えば随分と平和呆けをした頭をしていた。
何故なら…それが俺が耳にする彼女の
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 456人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にゃむ吉(プロフ) - おりーぶ。さん» お祝いコメントありがとうございます！なるたけ期間が空かないよう頑張ります…！ (2021年7月11日 18時) (
レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
おりーぶ。 - 続編決定おめです！更新が止まっていても応援してます！待ってます！ (2021年7月11日 17時) (レス) id: 31f81a6940 (このIDを非表示/違反報告)
にゃむ吉(プロフ) - 桜華さん» コメントありがとうございます！色々と試行錯誤しておりますので、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年6月3日 6時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - アンモビウム、、、。これは、展開がなかなか読めない花ですね、、。更新楽しみです！頑張ってください！ (2021年6月2日 23時) (レス) id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にゃむ吉 | 作成日時：2021年4月21日 16時
