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ゆったりとしたカフェミュージック。
程よい観葉植物のグリーンに、落ち着く木の温もりを感じられる店内の装飾。
まだ新しい、できたばかりの建物の香りの中に香るコーヒーが俺の気持ちを少しだけ落ち着かせた。
それから...なんやろ、ほんの少し、お花の香りもする。
｢いらっしゃいませ、カフェ《なないろ》へようこそ。お好きな席、座ってください｣
桐｢あ、ありがとうございます...｣
｢ゆっくりしていってくださいね｣
胸元のプレートに『ななみ』とひらがなで書いてある...、歳は俺より下っぽいな。
ふわんとした柔らかい雰囲気の女性が、席に着いた時にお水を持ってきてくれた。
ほんまは何もする気も起きなかったから、食欲もないしなにか飲みたいものがあった訳じゃないんやけど
完全にコーヒーの香りにやられた。
桐｢あの、、コーヒー、ホットで｣
｢かしこまりました。...他にご注文、ありますか?｣
桐｢いや...、｣
コーヒー、一杯飲んだら帰ろう。
そう思っていたのに、メニューの下の方に書いてある《お花とドリンク》の文字に惹かれて。
桐｢あの、このお花...も｣
｢はぁい、じゃあお花お持ちしますね。少々お待ちください｣
謎のメニューに惹かれて勢いで頼んでしまった...。
なんやろ、《お花とドリンク》って...、コーヒーにお花浮いてる、とか?
色んなことぐるぐる考えてみたけどやっぱりわからんから頭使うのをやめた。
諦めも肝心や。
コーヒーが来るまで、さっき七海さんが持ってきてくれたお水で喉を潤す。
一口飲むと、ほんのりレモンの香りが鼻をぬけた。
なんやっけこれ、デトックスウォーター?
洒落とんなぁ、、さすがおしゃれなカフェ。
｢お待たせしましたぁ...、あ、お水、、大丈夫でしたか?｣
桐｢あ、レモンの味しますね、ほんのり｣
｢そうなんですっ! デトックスウォーター好きなんですけど...色んなの入れちゃうからシンプルにしたんですけど...普通の方がいいですか?｣
桐｢いや、ええと思います。柑橘なら男でも飲みやすいですし｣
｢よかった、じゃあ今後もそうします! ...あ、すみません話し込んでしまって...お花、お持ちしました｣
桐｢あ、ありがとうございます｣
｢今日はこのお花をあなたに...《デルフィニウム･シネンシス》です｣
俺の目の前、テーブルの上にことん、と置かれたのは一輪挿しに入ってる水色のお花やった。
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作者名：maoka. | 作成日時：2021年8月13日 23時
