夏に降る雪 【紅一点】

夢の中の恋人［紫］ ページ27

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衣装替えの最中に聞こえた

"ふっかが倒れた"という言葉。






イヤモニを通した音声がどこか非現実的で、

息が止まるかと思った。








"「ふっか、ほんとに大丈夫？』

『だぁいじょぶだって、ただの風邪』

『顔色悪いし...』

『俺はもとから色白なのよ、

　Aも知ってるでしょ？』"









開演前、余裕ぶって

ヘラヘラ笑いながら言ったその言葉。


チケット代払ってるお客さんには

俺らの体調なんて関係ない、って


ライブも舞台も掛け持ちして、

弱みは見せない主義とか言ったくせに。



ふっかのバカ、全然大丈夫じゃ無いじゃん。







「......違う、私のバカ。」







何であの時止めなかったの、

ダメって言えなかったの。



押し寄せる後悔に、胸が押し潰されそう。



私がこんなこと言ったって

ふっかならこんな時、

Aのせいじゃねーよって笑うんでしょ？





イヤモニからずっとスタッフさんの

慌ただしい声が聞こえてくる。







「天宮さんっ、深澤さんが呼んでます！！」








次の出番までの少しの時間

そんな言葉にすぐに体が動いて。






案内された私と真反対の着替え場で、

辛そうに笑うふっかが居た。






「っ、はぁ、はぁ.....ふっかっ？！」

「ははっ、どんだけ、急いでんのよ....」

「わ...、熱っ...」






ひたりと触れた首筋は、

走ってきた私よりもずっと熱くて。



来る途中でスタッフさんに

状況は聞いてたけど、相当ひどい。





「ごめんふっか、私.....っ」

「なぁんでAが泣きそうな顔すんの」

「だって、っ」

「優しいねぇ.....俺に似てきた？なんつって」






ふっと笑いながら頭の上に乗る手、

本当に優しいのはどっちなの。



「天宮さん、出番です！」と

スタッフさんの声に急かされる。






「呼んでごめん、ほら行っといで」

「っ、ふっかは？」

「行くよ、すぐ。だからそんな顔しないの」






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