メルト・ロメオ［赤］ ページ15
.
［涼太side］
「「うわぁ...！！」」
雑誌の撮影、メイク室で
ヘアセットをしてもらっていたら
隣から大勢のメイクさんの歓声。
何事かと声のする方を向けば、
そこにはいつもと変わらない
Aの横顔......のはずだった。
「え.....っ」
「ふふ、素敵ですよね？"赤いルージュ"。
うちのメイクがどうしても、って
お願いしたみたいで」
ヘアセットで微調整する
スタイリストさんが、したり顔で微笑む。
Aは普段からほぼメイクはしないし、
してもファンデーションくらいなもので。
普通の女優さんがするような
アイメイクだってリップだってしないし、
強いて言えばライブの時に
アイラインを引くくらいだ。
そんな彼女が、
柄にも無く赤いルージュなんて。
色白な肌に引かれた赤は、
どれだけ派手な衣装を見に纏っても
そこだけが鮮明だった。
・
・
「落していい？」
「ダメ、せっかく綺麗なんだから」
「やだ、恥ずかしいやっぱり。
....ねぇ涼太ってば」
カメラの前に2人並んでからも
Aがずっと口元を隠す。
衣装はいつも通りパンツスタイルだけど、
見慣れたショートヘアから覗く耳は
薄赤く透き通っている。
それは俺だって、こんなに綺麗な姿を
独り占めできるならそうしたいけどさ。
「ほら、手。解いて。」
遠慮がちに閉ざした手を
ふわりと解いて見せれば
その瞬間に切られるシャッター。
カメラマンの周りから
おぉっと感嘆が漏れる。
「あっ、今の使わないでください！」
「あ、使ってください」
「ねぇ涼太なんかキャラ崩壊してる！」
「Aに壊されるなら本望だよ？」
そんな会話に
シャッター音と笑い声が重なり合う。
「そういうときだけ貴族感出さないで」
「毎日貴族だから、自然に出ちゃうみたい」
「毎日貴族とかいうパワーワードいいから」
さっきまで結構ロマンチックで
いい感じだと思ったんだけどな。
結局隣で不貞腐れる彼女にペースを乱されて
内心それも、悪くないかもって思える。
いつか今日のことをAは忘れるだろうけど
いつか今日のことを俺は思い出すだろう。
そしてまた、Aのことを
もっと大切に思うんだ。
そうやっていつか
彼女の髪がずっと長くなる頃には
この気持ちが伝わるかもしれない。
だから今はもう少しだけ、
この気持ちに気づかないふりをしていよう。
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takkimakki(プロフ) - 初めまして！こちらのお話に出会い、引き込まれて読ませていただいています。綺麗な日本語と切ない描写に、大ファンになりました！ (2023年2月17日 9時) (
レス) @page30 id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - さん» コメントありがとうございます！更新頻度遅くなってしまって申し訳ないです！！ですが、私の都合上どうしても更新頻度字が偏ってしまうこともあるので、そういった点はご了承いただけますとありがたいです。ご意見ありがとうございます！ (2021年6月30日 1時) (レス) id: c7653d64b7 (このIDを非表示/違反報告)
- こっちも更新してほしいです (2021年6月29日 13時) (レス) id: 7d0243170f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - Ashitakaさん» はじめまして^^ コメントありがとうございます( ; _ ; )お話を書くときはいつも印象に残るような言葉遣いをイメージして描いていたので、そう言っていただけてとってもとっても嬉しいです^ ^ぜひたくさん読んでこの作品に浸っていただけたらなと思います！！ (2021年6月17日 12時) (レス) id: c7653d64b7 (このIDを非表示/違反報告)
Ashitaka(プロフ) - はじめまして、今読んでいる真っ最中なのですが、ラウちゃんの「僕の届かない夜に連れていく」に胸がギュッと苦しくなり、思わずコメントをしてしまいました…。言葉ひとつひとつがとても素敵です。では、続きを読んで参ります…！ (2021年6月16日 15時) (レス) id: ffdf66b49e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：透 | 作成日時：2021年6月10日 22時
