1-2 ページ4
私たちはまほろばという児童養護施設で育った。
私には親がいない。気付いたら一人ぼっちだった。叔母の世話になってはいたが、彼女は私を愛してはいなかった。５歳の夏、私は施設に預けられた。そこで結子先生や竜哉、イクオに出会ったのだ。
あそこは本当に楽園だった。今でもよく夢に見るし、そのたびに目が覚めた時言いようのない喪失感に襲われる。
結子先生は何者かに殺され、それを”金時計の男”が隠蔽した。それを暴くために竜哉は極道、そしてイクオは警察の道を選んだ。私は二人を支える。ただ、それだけ。
――...ピピピピピピピピ...
突然鳴った竜哉のスマホの音に、はっと意識が戻る。鬱陶しそうにスマホの画面を見た彼は、ふう、と一息つくと通話ボタンを押す。
「...俺だ」
かすかに通話相手の声が聞こえるが、誰かまではわからない。まだほんのりと温かいカフェオレを口に運ぶ。甘い。砂糖を入れすぎたようだ。
「ああ...今Aの家にいる。面倒だ。来い」
自分の名前が出て一瞬ビクっとするが、おそらく電話の相手はイクオだろう。
私の名前を出すのは深町さんかイクオ相手だけだ。
少し言葉を交わすと電話を切り、コーヒーを飲む。
「イクオ？」
「ああ。今から来る」
「毎度思うけどここ私の家だからね？わかってる？」
竜哉が急に押しかけてくるのは今日が初めてじゃない。し、勝手に人を呼ぶ(イクオしか呼ぶ人はいないのだけれど)。全然構わないんだけど、そのまま流すのはなんだか癪だから少し怒ったように言ってみる。
すると、切れ長の目でこちらを見て薄く笑った。
フン、と鼻で笑う。
「お前は俺の頼みを断れない。そうだろ」
ずるい。そうだ。私は彼を拒めない。
でも。
「いつもはいはいって許すと思ったらおおまちが――」
急に腕をぐいっと引っ張られ、彼の胸に倒れ込む。ふわっと、彼の匂いがした。まあ、おそらくは使っている柔軟剤の香りなんだけど...それでも、この彼の匂いは好きだ。
子供をあやすように優しく抱きしめられ、頭を撫でられる。
「...いつもありがとうな、A。助かってる」
低い声が耳元に落ちる。ああ...蕩けてしまう。体の体温が上がるのが分かる。きっと顔は真っ赤になっているだろう。顔を隠すように竜哉の胸を頭でぐりぐりと押す。
「感謝しなさいよ〜！」
声が上ずってしまう。ニヤけが止まらない。普段こうやってありがとうなんて言う人ではないから。
「おう」
何照れてんだと言わんばかりに笑いを含んだ声が上から降ってくる。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←1-1
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玖蘭零☆(プロフ) - 7氏さん» あ…編集画面でつけたり外したり簡単にできるので間違えてつけちゃったのではないですか？ お気を付けてくださいね！ (2017年11月12日 9時) (
レス) id: 449d26bdad (このIDを非表示/違反報告)
7氏(プロフ) - ＞玖蘭零さん あれ？最初の公開の時にはチェック外してたはずなんだけど...ご指摘ありがとうございます＾＾ (2017年11月12日 9時) (レス) id: e26f7429af (このIDを非表示/違反報告)
玖蘭零☆(プロフ) - ドラマとか題材にしてる場合でもオリフラは外してくださいねー 編集画面のところで下に下がると｢■実在人物・団体・キャラクター、不使用のオリジナルコンテンツである｣という項目があるのでそこのチェックを外せば大丈夫です (2017年11月12日 9時) (レス) id: 449d26bdad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：7氏 | 作成日時：2017年11月12日 3時
