with * ページ17
「やり直し。」
まただ。
今日もまた、何も上手くいかない。もう、ここ数日はこんな生活だ。
社会人になって半年。ある程度仕事はできるようになったが、サクサクこなせるまでには至っていない。
最近は、仕事だけでなくプライベートでもツイてないことばかり続いていて嫌になる。天気予報では一日中晴れって言ってたのに帰る頃には土砂降り。駅までの道のりで4回も車の水しぶきを受け、俺以外にも雨に打たれた人たちがぎゅうぎゅうに押し寄せ、臭くなった満員電車に揺られ帰宅するも雷で停電。すぐに復旧したものの何故か断水の生活を強いられ、業者が来るまでは市販の水と銭湯に金を費やしている。
てか俺何でスーパーで水買わなきゃないのか理解できないんだけど。水道水じゃ駄目なのか？外国じゃあるまいし。ねえ？
いや、今の俺はこんな明るく振る舞える状態じゃない。もう心身ボロボロで死にそうだ。というかいっそ死にたい。
神様どうか、このどうしようもない俺を殺してください。
そんなこと願いながら歩く帰り道。
最寄り駅から家までの道中に、小さな公園がある。何かに吸い込まれるように、俺の体は公園へ向かっていた。
着くとそこには人はおらず、ひとまずベンチに腰を下ろす。
今日の天気は雨。そりゃ人もいない訳だ。
雨ってずるいよね。悲観的、感傷的な気分になってしまう。
もうどうでもいいやこんな世界。俺もここまでだな。
そんな風に思いながら空を見上げる。
空の涙に目を閉じる。
聴覚が鋭くなる。
誰かの足音が聞こえる。
「風邪引きますよ。」
降りしきる涙に濡れないよう傘を差した女性の優しい声に、俺は雨粒を垂らした。
TIME 『with』
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作者名：名奈 | 作成日時：2021年5月15日 22時
