離 ページ13
悲しみ、孤独。
そういった感情はBluesと呼ばれる。
これらの感情の色は何色かと問われれば、大抵の人は青と答えるのではないだろうか。
俺が一番好きな色は青だ。
空や海といった自然の色に、藍や紺といった深い色。
どちらかというと暗めの青が好きだから、後者を好む。
これらの与える陰な気持ちに、俺は引かれたのだ。
人間には感情がある。四字熟語でいうと喜怒哀楽。
そこには"哀しみ"が含まれている。
何もかもに満たされていた俺は、この感情を知らずに生きてきた。
周りで悲しそうにしてる人はいたが、俺にはその感情を理解することができなかった。
だから今から、体験してみようと思う。
俺には彼女がいる。もう付き合って4年ほどになる。
彼女の就職を機に同棲しようと話を進めているのだが、それを断って喧嘩に持ち込み、別れを持ち出す。これが作戦だ。
正直俺は彼女のことそこまで好きじゃない。ノリで付き合ったようなものだから、そこまで悲しくはならない気もするが、物は試しだ。
「○○くんどうしたの？」
どうやら、自分で思っていたよりも彼女の話を聞いていなかったようだ。
「ううん。なんでもないよ。」
いつもの笑顔で返答すると、そっかと言って話し始めた。
「同棲のことなんだけどさ、同棲する時に一番大事なのって家事の分担だと思うんだよね。私料理と洗濯はできるけど、掃除あんま好きじゃなくてさ〜」
「A、」
「なに？」
「俺、Aとは同棲できない。」
「……え？それどういうこと？」
「そのまんまの意味だよ。」
「…なんで？○○くんも同棲オッケーしてくれたじゃん。何か私悪いことしたかな？それなら」
「……別れよう。」
「………は？」
「俺、Aのこと好きじゃなくなったんだよね。正直。そんな人と同棲とかごめんだし。」
「……それならもっと早く言ってよ！！私だいぶ前から同棲したいって言ってたよね！？それをOKしたのは○○くんだよね！！？その時から私への気持ちなかったなら断ってよ！！」
「…ごめん。」
「……もういい。私だって好きになってくれてない彼氏なんていらない。こっちから願い下げだわ。」
広げていたプリント類を雑にまとめるA。
「さようなら。」
その一言は、思っていたよりも俺の心を抉った。
LONE WOLF 『離』
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作者名：名奈 | 作成日時：2021年5月15日 22時
