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間延びした呼び鈴の音がし、欠伸を零しながら玄関の鍵を開ける。目の前には尾形がビニール袋を下げて立っていた。
「……お前、客人が来るのにそのカッコはねぇだろ」
「いつも堅苦しい格好をしているから、つい」
今の自分は、襟が伸びきったサイズの大きいTシャツにショートパンツを履いており、大分だらしない格好をしていた。まぁ、同期と宅飲みの時なんて毎回こんなものだ。
背中でため息を聞きつつ、冷蔵庫にあった惣菜をレンジで温める。リビングの方に持って行くと、既に尾形はソファーに座ってテレビをつけているところだった。
「映画やってるけど見るか」
「見る」
尾形の隣に座ってチャンネルを変えると丁度いいタイミングでオープニングが始まったので、その間に缶ビールを開けて無言で乾杯する。
内容は、不朽の名作と謳われた古い戦争映画だった。前線で戦うありふれた兵士の物語。そこに出兵前の家族との生活や仲間との絆を描き、よく言えば王道な、悪く言えばどこにでもある展開。
しかし、ラストだけ少し特殊だった。主人公は生き残るでもなく、肺と腹に弾が貫通してあっさりと亡くなり暗転。本当に突拍子もない最期で幕を閉じて、後は彼の友人のエピローグが流れていた。
戦闘シーンの鬼気迫る演出と演技は確かに見事で、見る価値はあったなとビールを一口飲み隣を見やると、尾形は目を塞ぎ、ソファーの隅で小さくなっていた。
けほ、と噎せるような声の後から段々と呼吸が浅くなっていくのが聞こえ、訳も分からぬまま声を掛ける。
「尾形？……なぁ、大丈夫か、」
「……A」
喉から絞り出したような掠れ声で自分の名前を呼ばれ、何事かと固まってしまった。しかし、その間から一瞬見えた表情は「あの時」のように恐怖に支配されていて、全てを悟った。
あの主人公の撃たれた場所は、私と、同じ。
「お前は、ここにいるのか」
うわ言のように呟く彼の瞳は虚ろで、目の前の私も見えていないようだった。安心させるように腕を背に回し、体を寄せる。そうすれば、尾形もおずおずと手を差し出して、自然と体温を分け合う形になった。とく、とく、と心音だけが幽かに響く。
「……ああ」
離さないと言わんばかりに腕に力が込められ、甘えるように頬に顔を擦り寄せられた。それを慈しむように撫でて、そのまま、唇を重ねる。
テレビから聞こえるエンドロールのクラシックが、部屋で揺蕩っていた。
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−(プロフ) - わ〜！！！！そう言って貰えると励みになります！！！！！ありがとうございます！！！！！ (2021年10月29日 20時) (
レス) id: abbb997ccd (このIDを非表示/違反報告)
桜忌(プロフ) - めっちゃ好きです。これからも続き楽しみに待ってます！！ (2021年10月29日 1時) (レス) @page8 id: 542ce05019 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：− | 作成日時：2021年10月17日 22時
