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柴崎の発見によって終わったように見えた所在不明図書問題。
安心しきっていた特殊部隊は...見事に足元をすくわれた。
「柴崎くん、教育委員会から指定のあった『望ましくない図書』、複本も含めて全部館長室に持ってきてくれ」
「わかりました副館長。...複本も、ですか」
「なんでも教育委員会が複本も含めて見ながら話したいそうでな。大変だと思うが、頼めるか」
「はい、大丈夫です。運んでおきますね」
ふーん、閉館近い今から会談するのね。
...盗み聞き、行けるかも。
「ああ、ありがとう。...本当なら館長だけでいいはずなんだがな。あの人だけだと何をしでかすかわからん」
副館長は、まだ40歳代にして、二監。
館長とは10歳程の歳の差があるはずなのに、その口調はまるでできの悪い息子について話すかのようだ。
すぐに望ましくない図書を揃え、館長室まで持って行く。
するとその後すぐに会談が始まるようで、教育委員会のお偉方とすれ違った。
運び終えて、普段の業務に戻った直後。
館内に非常ベルが鳴り響いた。
次いで切迫した館内放送が響く。
『哨戒中の警備より入電、良化特務機関が当館周辺に展開中!総員、至急警戒態勢に着け!館内に残っている利用者は至急館外に退去してください!』
新隊員の正式な入隊以来、初めての検閲抗争である。
さすがのあたしとはいえ、固まってしまって動けない。
「端末ロックしろ!」
上司の大声で、やっと硬直がほどけた。
端末に触れた順に、家族の誕生日を逆打ちで入れて行く。
端末にはパスワードが決まっておらず、館員がその場で決める事になっている。
漏洩防止のためだ。
自分の触れた端末は覚えておかなければならない。
「全員退避!」
上司の声で防護室に向かって走る。
普段はこういった指示を出すのは副館長のはずだが、現在教育委員会と会談中だ。
...待って。
「現在館長室で館長たちが教育委員会と会談中です!」
「問題ない!副館長が誘導しているはずだ!」
安心して走りだそうとするけど、先ほど運んだ図書の存在を思い出した。
...それが狙いか。
方向を変え、自分の精一杯のスピードで放送室に向かって走った。
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るり(プロフ) - 絢さん» ありがとうございます!!ご期待に添えるように頑張ります! (2017年5月13日 5時) (レス) id: f6d4dd4d44 (このIDを非表示/違反報告)
絢(プロフ) - この作品、すごく好きでいつも読ませていただいてます!頑張ってください! (2017年5月11日 20時) (レス) id: 021a2c26af (このIDを非表示/違反報告)
無名 - こんにちは、堂上教官ファンです。作品すごくおもしろうです。 (2017年3月29日 15時) (レス) id: 30bcd37fb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るり | 作成日時:2017年3月4日 20時