夫婦二遊間 (ページ17)

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もしも

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無事にトシさんの引退会見が終わった。

涙も乾き、少し冷静になる。

26「目、めっちゃ腫れとんな。蒸しタオルかなんか貰ってきたらどうや？」

『え、そんなに腫れてます？』

26「おん、やから貰ってき？」

別にそこまで気にしていなかったが、半ばゴリ押しで蒸しタオルを貰いに行かされる。

別に、腫れとってもええねんけどなぁ。

トシさんを忘れないという証を残して。

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会場から控え室へ。

ガチャっと開けるとそこには、

『トシ、さん』

同じ様に目が赤く腫れているトシさんがいた。

18「…ぁあ、フジもタオル取りに来た？」

『あ、はい』

蒸しタオルではなかったが冷たい濡れたタオルを受け取った。

お互い、何故か気まずくて黙ったまま。

いつもこういう時は、トシさんから話を振ってくれた。

18「ねぇ、フジ？」

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『…はい？』

18「今度のオフはいつ？」

『オフ、ですか？』

18「伊豆、行ってくれるんだろ、一緒に」

"まさかさっきのは嘘だったのか？"と言って。

『…ふふっ、あははっ』

18「フジ？」

『…ふふ、すみません。なんか、昔のこと思い出しちゃって』

18「覚えてなかったら許さなかったところだった(笑)」

グーで頭をグリグリされる。

『…ほんまにお疲れ様でした』

18「まだそれ言う？もう充分だよ」

『やって、言っても言っても足りなくて、』

18「…泣くなよ、もう」

じわりとまた目に熱を持つのを感じた。

『う、ぐ…。すみません…』

俺はトシさんの胸で泣いた。

18「フジは本当に俺が好きだなぁ。いつ俺離れしてくれるか心配してたけど」

『そんなん！トシさん離れなんかできるはずないやないですか！』

18「それ、ヤスが聞いたら泣くぞ」

目が合って、

また笑い合った。

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こんな時間がいつまでも続けばいいと思った。

俺の尊敬している、大好きな大好きな先輩。

『(まだ現役でいて欲しかったなんていう、我儘は言えんやろなぁ)』

(フジ、顔ぐちゃぐちゃ。そんなんじゃヤスに嫌われるぞ)
(そんなん言われたって涙は止まってくれへんですよぉ…！！)

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もしも、願うなら。
まだ貴方と共に共闘したかった。