若き彼らの、まっすぐで大切な、告白と約束。 ページ16
「……豹馬……?」
豹馬はAの両手を、自身の両手で包んだ。
豹馬の手、私よりずっと大っきくて、ゴツゴツしてる。
豹馬が普段から頑張ってるんだって分かる手だ……。
Aの手は、俺よりずっと小さくて、柔らかい。
だけど力がなくて、強く握れば、壊れてしまいそうだ。
Aの手から伝わる体温は低くて、その細い身体が必死に生きているのだと思うと、この手をずっと包んでいてやりたいと思う。
「こういう時、どうすればいいのか、何を言えばいいのか……正しい答えを、俺は知らないけど。」
「……?」
「好きだ。Aのことが、俺は好き。ただの友達としてじゃなくて、お前を一人の女の子として好きだ。俺はプロジェクトに参加する。だから、暫くは会えなくなる。お前が手術をする時が来ても、俺は傍にいない。」
Aの瞳は、輝いて、また不安そうに揺れる。
「けど、ずっと想ってる。Aの事ばかり気にかけてはいられないけど、ずっと心の片隅に、お前がいる。……だから、泣かないでくれ。俺が一生、守ってやるよ。絶対、Aを一人ぼっちにさせない。」
「豹馬ぁ……ずるいよ、そんな優しい言葉さぁ……どんなに頑張ってもどんなに強がっても、怖さが私を諦めさせようとするの。けど、そんなコト言われたら……私……私だって豹馬が大好きだよ…!」
「ああ。」
「私、こんなところで、終われないや。ありがとう豹馬、私に出逢ってくれて。」
「バカ、それは俺も同じ事だ。」
頭から包み込むように、豹馬はAを抱き寄せた。
どこかへ消えてしまわぬように、壊れてしまわぬように。
彼女が神様に、連れて行かれぬように。
そして、彼がプロジェクトへ向かう日は訪れる。
「豹馬!行ってらっしゃい!夢の為に、頑張ってきてね!!」
今から向かうため、病院を出ていく豹馬を病室の窓から見送るA。
「ああ。A、お前の為にも俺は負けない。」
「約束!」
病院が見えなくなった時、豹馬は溜息をついた。
そして静かに泣いていた。
Aにもう会えなくなるかもしれない恐怖もあった。
A、俺はお前を幸せにするって誓うよ。けど、一つだけ……嘘をついてしまった。
俺は夢を諦めるためにこのプロジェクトに参加するんだ。
だから、負けないなんて言っちゃいけなかったんだ。
ごめん、A。
好きな人を元気付けたかった彼はその葛藤に苦しんでいた。
彼らの恋は痛いくらいまっすぐで、輝いている。
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桜花(プロフ) - きのこさん» おお!?そこに気づいてもらえたの嬉しいです!最初は早くに現れた王子様にする予定だったんですけど彼は自他共に認める足の速さを持つので、そこを活かさないわけには行かない!と思って書きました!いつもコメントありがとうございます! (2023年3月20日 12時) (レス) id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - お前のもとに誰よりも速くに辿り着いた王子様が、俺で。ここ!めっちゃいい!!足の速さの事もあって書いたと感じました!!🫶 (2023年3月20日 12時) (レス) @page22 id: fc65f8a88c (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - きのこさん» コメントありがとうございます!まさか千切くん九州男児とは……言われてみれば方言ないですよね(だから気づいてないのですけども)方言千切くんもちょっと見てみたいですけど! (2023年3月9日 12時) (レス) id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ほーい!東京近辺ね!!千切は方言とかなくて赤髪だからだから都会感あるからしゃあない! (2023年3月9日 9時) (レス) @page20 id: fc65f8a88c (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - きのこさん» コメントありがとうございます!!ロマンを追い求めて作ってるのでもっと素敵になるよう、次の更新も頑張ります!! (2023年2月26日 17時) (レス) @page19 id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年12月11日 17時