久しぶりに見た学生服の男の子。 ページ2
「あ……いや……えっと、」
まさかこの子がすぐに気づいてこっちに振り返るとは思っていなかった俺はどうしたらいいのか分からずに困惑した。
「松葉杖……怪我したの?」
「え?ああ、うん。」
「そう……お大事に。あなた、初めて見る顔だわ。ここの病院にかかっている学生の子には、中々出会わないもの。」
ここは大きな病院で、患者の受け入れや実績においても非常に規模が大きく、地元でも有名であった。
ただ、Aのような年齢の入院患者は少なく、幼い子どもか老人が多かった。
「アンタは?車椅子に乗ってるってことは、アンタも怪我なの?」
「ううん。私は病気で足腰が弱いから、移動するときにはこうしてよく車椅子に乗ってるの。」
「へぇ……」
「あなたはこれから暫くはここの病院に来る?」
「ああ。リハビリもあるし、当分はサッカーも出来ねぇから。」
「あなたサッカー少年なの?凄いわ!もしかして有名人?」
「ある程度取材を受けたことはあるかな。勝手に赤豹とか異名つけられちまったよ。」
「そうなんだ……初めて知ったわ。凄いのね。」
少し女の子はうーん……と考えた後、こう言った。
「ねえ、あなた私の友達になって!」
「え?」
「お願い!私、ずっとここに居るから、お友達が出来ないの。あなたが退院するまでの間でいいから、私のお友達になって!」
Aは過去に同じ時期に入院していた自分よりずっと年下の友達を失っていた。
病院に来る子を見かけても、その子達は入院患者でも定期的に通う患者でもないため、見ているだけだった。
「……いいよ、友達になろう、俺ら。」
「ほんと!?」
「ああ。」
「私はAA!」
「俺は千切豹馬。よろしくな。」
「うん!よろしくね、千切くん!」
そう言って、俺たちは握手をした。
「ねえ千切くん。私ね、お友達にAって呼んでもらえたら嬉しいな、なんて。」
今まで、帰っていく女の子が友達に呼び捨てで呼ばれているのをAは羨ましそうに見ていた。
「分かった。俺のことも豹馬でいい。」
「うん、じゃあ豹馬って呼ばせてもらうね。」
「あっ、母さんが出てきた。またな、A。」
「うん、豹馬。気をつけて帰ってね!」
彼は小さく手を振って帰っていった。
初めて同じ年くらいの子の友達が出来て、Aの心は温かくなった。
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桜花(プロフ) - きのこさん» おお!?そこに気づいてもらえたの嬉しいです!最初は早くに現れた王子様にする予定だったんですけど彼は自他共に認める足の速さを持つので、そこを活かさないわけには行かない!と思って書きました!いつもコメントありがとうございます! (2023年3月20日 12時) (レス) id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - お前のもとに誰よりも速くに辿り着いた王子様が、俺で。ここ!めっちゃいい!!足の速さの事もあって書いたと感じました!!🫶 (2023年3月20日 12時) (レス) @page22 id: fc65f8a88c (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - きのこさん» コメントありがとうございます!まさか千切くん九州男児とは……言われてみれば方言ないですよね(だから気づいてないのですけども)方言千切くんもちょっと見てみたいですけど! (2023年3月9日 12時) (レス) id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ほーい!東京近辺ね!!千切は方言とかなくて赤髪だからだから都会感あるからしゃあない! (2023年3月9日 9時) (レス) @page20 id: fc65f8a88c (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - きのこさん» コメントありがとうございます!!ロマンを追い求めて作ってるのでもっと素敵になるよう、次の更新も頑張ります!! (2023年2月26日 17時) (レス) @page19 id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年12月11日 17時