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第九話 ページ10

何で俺がAに欲しい物を聞いたのかって?
Aにクリスマスプレゼント買ってあげるためだ。

Aにサンタさんはやって来ない。
うちは母さんがやってるから。父さんはAにプレゼントがないことを知らない。

幼稚園の頃、兄ちゃんに「サンタさんなんて居ないんだぜ。親がそーなの。」なんて言われて、信じてた俺はずーっと起きてたんだ。そしたらプレゼント持った親が入ってきてさ、ショックだったワ。

初めてAがサンタさんの存在を知った時のこと。
大きなツリーの元に置かれた沢山の色とりどりの箱。

「サンタさん来たの!?」

でも、中身は俺と兄ちゃんのモノだけしかなかった。

「…Aのないの…?」

「ごめんな、俺らの分しか入ってなかった…」

「…いいの。早くおとなになるから、おもちゃがなくても、Aはへいき。」

なんて強がっていたのに、その日ずっと部屋に籠もってた。
夜、こっそりAの部屋を覗いてみたら、やっぱり。
部屋の隅っこで丸まって泣いてるじゃん。

あの時は3人同じ部屋でさ、Aが本当に辛そうだったから、俺と兄ちゃんはその日一日、部屋に入らなかった。

Aはサンタさんが来るのをずっと楽しみにしていたのにアイツのもとにサンタさんが来ることはなくて。

何度目かのクリスマス、Aは真夜中に小さな声で祈ってた。

「私、もっといい子になるから……我慢ももっと出来るから、だからお願い、サンタさん…」

俺や兄ちゃんに聞こえないように、一生懸命声を抑えて泣くA。

お前は俺らなんかよりずっといい子じゃん。
我慢だってずっとしてる。

それなのに、まだ足りないのかよ。

このままじゃお前の元にサンタさんなんて来ない。

そのたびにお前が暗くて寒い夜にひとりぼっちで泣くだけだ。

お前が苦しそうに一人で泣いてんのに、背中をさすってやれないなんて、俺はイヤだ。

お前の元に来ないなら、俺がお前のサンタさんになってやる。


その年から俺は、Aにさり気なく欲しい物を聞いては、A宛にツリーの下にプレゼントを贈った。

***
「竜ちゃん!見てみて!かわいいでしょ!?」

「おう、良かったな。」

その顔だよ。俺が見たかったのは。

お前は泣いてるより、笑ってる方がずっとかわいい。

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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時

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