第四十五話 ページ49
「あ、竜ちゃん……!」
「何?」
「今から出かけるの?」
「え、あー…うん。ちょっと出掛けてくるわ。晩飯食って帰ってくるから兄貴と適当に食べてて。」
「うん……」
多分、デートなんだろうな。
「じゃ、行ってくる。」
「あっ、ちょっと待って!」
Aは走って竜胆の背中を追いかけ、後ろからぎゅっと抱きしめた。
「A…?」
「行ってらっしゃい。気をつけてね。」
「……あァ。」
「楽しんできてね。」
「お前にも、何か買ってきてやるよ。」
「うん。約束だからね。」
そうして竜ちゃんは彼女とのデートに出かけていってしまった。
ペタンと座り込む。
ソウヤ君、せっかく君が私の気持ちを後押ししてくれたのに、何も出来なくてごめんね。
私の好きな人は多分、竜ちゃんなんだ。
いつだって私が落ち込んだとき隣にいてくれたのは竜ちゃんだった。
でもその人と私が結ばれることは絶対なくて。
そしてその人にはもう大切な人が居て。
……気付いたときにはもう全部が遅すぎたなんて。
「うっ、うう……!!」
ごめん。ごめんね、ソウヤ君。
もう二度と感じられないんだろうな。
あの大好きな背中のぬくもりは。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時