第四十二話 ページ46
「蘭ちゃん……」
「んー?」
Aを後ろから見つめていたら、振り返らずに名前を呼ばれた。
「隣来て。お願い。」
「ん。いーよ。」
Aの隣に立つ。前もあったな、ベランダで二人夜に話すの。
「……最近、竜ちゃん、私のこと避けてると思う。ねぇ、竜ちゃん私のこと嫌いになったと思う?」
「まさか。竜胆に限ってAを嫌うことなんてねぇよ。」
「……そ、だよね……彼女が出来てからの竜ちゃん、何か変…な気がする。私の顔もあんま見てくれないし、本当に……どうしたんだろう……。私はただ、竜ちゃんの隣に居たいだけなのに。」
「逆にAは?お前は大丈夫なわけ?今竜胆はいねぇから、言いたいことあるなら言えよ。」
「……こんな歳になって、まだお兄ちゃんに甘えてたいとか、ひとり占めしたいとか、子供っぽいってわかってる。だけどね、竜ちゃんの彼女……あの女の子たちにね、嫉妬してるの。どうしようもなく……!!」
そういうと、Aは泣き出してしまった。
私の大好きなお兄ちゃん。
竜ちゃんも蘭ちゃんも、ずっと私の隣にいると思ってた。
けれどそれはただの理想で、竜ちゃんはきっと今、大切な人を探してるんだよね。一生涯を共にする女の子を。
「A……蘭ちゃんにしとくか?」
「ふはっ、何それ。」
「幼い頃蘭ちゃんと結婚するー!って言ったろ?」
「言ったねぇ。でも蘭ちゃん浮気ものだからな〜」
「でもスゲェ特典あるぜ?」
「特典って?」
「俺の顔毎日拝み放題」
「ふふっ。」
「こんなイケメンそうそういねーだろ?」
「蘭ちゃんみたいなイケメンそんなにいたら困るよ。」
竜胆、誰の想いの丈がお前と違いすぎるって?
A、お前のこと大好きじゃん。
下手すりゃ、お前がAを想うよりも。
嫉妬心を露わにしたAの顔を見て、確信した。
今はまだ自覚がなくても、Aはお前を一人の男として愛している。
Aがその気持ちを自覚して、お前がAに歩み寄れたなら……二人を隔てるナイフの上を歩けるなら、お前たちは結ばれるさ。何があろうと絶対に。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
