第四十一話 ページ44
Aは七海にメイクを教わり、服も拘るようになった。
「蘭ちゃん、今日のメイクどう?」
「んー?カワイイじゃん。リップの色とマニキュアの色変えた?」
「そー!流石蘭ちゃん!」
竜ちゃんも、気づいてくれるかな……?
「ねぇ竜ちゃん…」
「兄貴、俺出かけてくるワ。」
「んー?おう。」
竜ちゃん、今の聞こえてたよね……?
なんで被せるように言ったの……?
わかんない。
何でだろ。何でだか、分からないけど……
私は今、竜ちゃんに明確に拒絶された。
私が世界で一番恐れていたこと。
絶対に、何があっても起きないだろうと信じていたのに。
夜になっても竜ちゃんは帰ってこない。
Aは一人、ベランダで星空を見つめていた。
「……」
妹を見守る蘭。
彼は昨日の竜胆との会話を思い出していた。
***
「夜空なんて眺めてどした?珍しいじゃん。」
「……別に。」
「Aのことか?」
「事あるごとにAの名前出すのやめろよ兄ちゃん。」
「結局Aのことなんだろ?」
「……そうだけどさ。」
「Aはもう寝てる。今は俺らだけだ。男同士腹を割って話したらいいじゃん?」
「……」
「Aが好きなんだろ。」
「それは兄ちゃんが一番良く知ってんだろ。」
「まあな。お前、あのままでいいわけ?A、どんどん可愛くなってるし。東卍のガキに取られるかもな。このままだと。」
「……アイツの方が、多分Aを幸せに出来る。俺なんかより、ずっとAに似合ってる。」
「今日マジどしたン?弱気なんてらしくねぇじゃん。」
「……ホントは嫌なんだよ、他の男にAを譲るの。けど俺とAじゃ、想いの丈が違いすぎる。」
そう呟いた竜胆の瞳は、悲しそうに揺れていた。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時