第四十話 ページ43
「Aちゃん。君はその大切な人が遠くに行ってしまうような気がして、辛かったんだね。だったら、俺じゃ駄目かな……?」
「ソウヤ君……それって……」
「うん。俺はAちゃん、君が好き。友達としてじゃなくて、男として君が好きなんだ。
君が俺に色んな話をしてくれるようになって、君を知って、どんどん好きになった。
泣いてる君も、笑ってる君も、俺は好き。」
顔を真っ赤にしながら一生懸命気持ちを伝えてくれるソウヤ君。
今まで私にそんなことを言ってくれる人はいなくて、素直に嬉しく思った。
けれど私の心の中はぐちゃぐちゃで。
「ありがとう、ソウヤ君……ごめん…まだ気持ちの整理がつかないから、もう少しだけ待って……」
「うん。俺はいつまでも待つよ。」
やっぱり君は、どこまでも優しいんだね、ソウヤ君。
「あれ、河田にAじゃん。」
「七海ちゃん……?」
「あー!Aどしたのその顔!」
「色々あって……ソウヤ君に話聞いてもらってた。」
「そう…二人共、これから予定は?」
「…ない。」
「ごめん、俺これから集会なんだ。」
「じゃあA、今日はうち泊まってきな。話きいたげるからさ。」
「うん…ありがとう。」
***
ソウヤ君を見送って、私は七海ちゃんの家に行った。
「それで、何があったの?」
「……」
「大丈夫、私は誰にも言ったりしないから。河田にも、他の奴らにも。」
「…竜ちゃんがキスしてるところを、見ちゃった…」
「竜胆?」
「私、何だかそれが心の底から凄く凄くイヤで、頭の中がグチャグチャで…もう何も考えられなかった…!!」
そう言えば蘭に前聞いた事がある。一番下の妹をいっつも竜胆が守っていると。竜胆は妹にとってヒーローのような存在だと。
でも多分、この子は妹だから寂しい、なんていう気持ちじゃないと思う。
目の前にいるこの子はきっと、恋してる。
……あの時の私を見ているみたいね。
だって私にそっくりなんだもの。
私はAを抱き寄せた。
「アンタが辛いのはよく分かったよ。竜胆が大事なんでしょ?その気持ちも分かる。けどさ、選択肢は本当に竜胆だけなの?……河田だっているんだよ?世の中には男なんていっぱいいるんだからさ。」
「七海ちゃん…」
「あたしがAをもっと可愛くしてあげる。」
七海ちゃんはそう言うとドレッサーの椅子を引いた。
「座りなよ。」
「あ、うん…」
「メイクとか色々、教えられること全部教えてあげる。」
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時