第三十八話 ページ41
「あれ、Aちゃん……?」
人混みの中、Aちゃんがいた。
こっちにはまだ気がついていないみたい。
「ねぇ─………!!」
一瞬だけど、Aちゃんの顔が見えたけれど……
彼女は泣いていた。
やっぱりあの子はほっとけなくて、俺は急いで追いかけた。
***
「あれれ〜?泣いてんの?」
「俺らが慰めてあげよっか?」
「俺このコ知ってるぜ、灰谷んトコの妹だろ?」
「マジ!?」
「てかマジで顔かわいいじゃん♡」
……どうしよう……。早く逃げなきゃなのに、身体は動かなくて。このまま連れて行かれちゃうかも。蘭ちゃん竜ちゃんの妹だって知ってるから、また酷いことされるかも。
「……ねぇ、その子に触らないでくれる?」
「あ?何だてめぇ。……！？」
ソウヤ君……?
***
「もう大丈夫だよAちゃん。」
「助けてくれてありがとう、ソウヤ君。」
「困ってる女の子…ううん、Aちゃんのことはほっとけないよ。ねぇ、今暇?」
「うん。」
「だったらさ、二人でちょっと散歩しない?」
「散歩か、いいね。」
良かった。今、誰かといたかったから。
ソウヤ君は優しいね。
また私は君の優しさに救われた。
二人で他愛も無い話をしながら歩く。
そしたらソウヤ君が、遠慮がちに聞いてきた。
「もしかしてだけど……何か辛いことあった?Aちゃん、泣いてたんでしょ?」
Aちゃん、俺は君の傷を治してあげたいんだ。
何かあったなら、正直に教えてほしい。
君は優しいから、誰にでも甘えられないし、弱音を吐かないんだよね。
相手に心配させたくないんだよね。
だから君は素直になる方法を知らないんだよね。
せめて彼女が、俺の前では素直になれるように。
俺は君に歩み寄る足を止めないよ。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
