第四話 ページ5
Aは何かあったとき、しょっちゅう竜胆の部屋にこもった。
布団を被ってぐすぐす泣く。
Aにとって大好きな竜胆の部屋が1番落ち着く場所だった。
「…ハルくん…」
Aの涙が人形にぽたりと落ちる。
「呼んだ?」
横からひょいっと現れたハルくん。服もきちんと綺麗に着せられている。
「!竜ちゃん…」
「人形遊びなら、兄ちゃんじゃなくて俺がやってやる。だから俺のベッド涙で濡らすのダメ。分かった?」
「竜ちゃんがやってくれるハルくんは、他の女の子を好きになったりしない…?」
「ああ。ウワキなんてしねぇから安心しろ。人形遊び、やりたいんだろ?」
「うん!」
「ん、いい子。」
***
二人でAの部屋で遊ぶ。
するとガチャッとドアが開いて兄ちゃんが顔を覗かせる。
「ふーん…キザだけどやるじゃん竜胆。流石俺の弟。」
「ちょ!見んなって兄ちゃん!」
「Aまだ俺のこと嫌い?」
「嫌い」
「本当は?」
自分の顔の良さを最大限活かして近付く兄ちゃん。
「…好き。でも許してないもん。」
「何したら許してくれんのー?」
「じゃあ一緒におままごとして。」
「OK」
「A…兄ちゃんまた浮気すんぞ。」
「私がママ、竜ちゃんがパパ。蘭ちゃんは赤ちゃんね。」
「蘭ちゃん赤ちゃんだって〜」
そういうなりAに甘えるように膝に頭を乗っける蘭。
「それが一番平和だワ。」
「はい。これ!」
Aは竜胆の左の薬指に玩具の指輪をはめた。
「おそろい!」
「!おう。」
ホントに手のかかる妹。
けど、笑った顔も泣いてる顔もすげぇかわいい。
いつかコイツもケッコンすんだろうな。
大きくなったらもっと可愛くなって男が寄ってくるんだろうな。
Aとケッコンしたヤツは、こんな感じなのかな。
***
結構な時間まで続いたままごと。
Aは疲れて寝ちまった。こんなに散らかってんのに…
「んじゃ蘭ちゃん風呂入ってくるワ。」
「うーわ兄ちゃんズリぃ。結局俺が片付けやんのかよ。」
バタンと閉じられた部屋。
すやすやと眠るA。
「りんちゃん、らんちゃん…」
寝言でもしょっちゅう俺らの名前を呼んでる。
かわいくて仕方ないやつ。
そっと頭を撫でてたら…
「もしかして竜胆、さっきのままごとAと結婚したらこんな感じとか思ってた?」
「!!急に話しかけてくんなよ兄ちゃん!早く風呂入れよ!」
「図星か。じゃ今度こそ入るわ。」
…図星だよ。悪りぃかよ。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時