第三十七話 ページ40
「はぁ……」
今回のテスト、頑張ったんだけどなぁ…
クラスの皆の頭が良くて、自分がどれだけ頑張っても良い結果にはならなかった。
個人としては良い成績なのに、順位が良くなかった。
上には上がいるもんな……
凄くAは落ち込んでいた。
「……早く帰ろ。」
*****
この前付き合っていた女とは別れ、また俺はAに雰囲気が似ている女と付き合うことにした。
その女は今まで付き合った女の中でもAに一番よく似ていた。
手の大きさ、身長、髪の色、仕草……
何もかもがAを見ているようで、コイツと付き合っていれば俺の心は多少は満たされた。
「竜胆君、キスして。」
そう言ってキスを迫るその女の姿がAに重なって見えて、俺はその女にキスをした。
Aを忘れるために、好きでもない女に、何度も何度も角度を変えて。
扉の開く音に、俺は驚いて顔を上げた。
そこにいたのは呆然としたAの姿だった。
「……っあ、ご、ごめん…!!」
Aは顔を赤くして、慌てて家を出ていった。
「今の子は?」
「……妹だ。」
「竜胆君妹いたんだ。」
さっきまでこの女がAに見えて仕方なかったのに。
本物のAを見たら、途端にコイツがAに見えなくなった。
……俺が本当に欲しいのは、Aだけなのに。
「……どうしたの?」
「何でもねぇよ。」
「…ん、」
Aを考えないために、俺はソイツに大人のキスをした。
奥深くまで、息が出来なくなるほどに。
Aを忘れるために俺は女と付き合った。
何人も何人も、Aに似た女を見つけて。
好きでもない女に愛をささやき、キスをして。
付き合うたびに色んなことが上手くなった。
満たされるフリをしていた。
でも満たされることはなくて。
Aに似ているだけに、虚しさはどんどん募っていった。
キスをしている間も、
偽りの愛を囁いている間も、
ずっと心は泣いていた。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
