第三十六話 ページ39
「……」
観に来てくれるのはいいんだけど…
「きゃ〜!灰谷さんのお兄さん!!」
きゃあきゃあ言いながら蘭ちゃんと竜ちゃんを囲む女の子たち。
その頃のソウヤと七海は……
「ほら見たことかあの女たちAじゃなくて蘭たち目当てかよ!!」
「何か、感じ悪いね……Aちゃんにも他の選手にも迷惑だしマナー違反だよ……」
石丸さん達…蘭ちゃんと竜ちゃんが目当てか……!!
ムッカつく……!!
蘭ちゃんは別にまんざらでもなさそうに女の子達に手振ってるし……!!
更にAを苛つかせたのが竜胆の近くに来た彼女の存在だった。
「竜胆〜!!私も来ちゃった〜♡」
……!!
……もう嫌だ。帰りたい。相手強い子なのに、こっちは集中できない。
誰も私を見てくれてない。
Aは俺と兄貴の方を見てはべーっ!!と舌を突き出してきた。
……お前が誰からも見られていなかったとしても、他の奴らが俺たちだけを見ていたとしても。俺はずっとお前だけを見てるぞ、A。
だから存分に戦えよ。
試合に勝っても負けてもどっちでもいい。
俺はお前を見るためだけにここにいるから。
ギャラリーになんか、負けるなよ。
そしたら、客席からAを呼ぶ声がした。
それを呼んだのはAのダチ二人で。
「A!アタシはあんたを見てるから!!存分にやってやりな!!」
「七海ちゃん……」
「Aちゃん!!俺も君だけ見てるから!!頑張って!!」
「ソウヤ君…」
そう言われると、Aの顔は赤くなって。
「なぁに今の。何か告白みたいじゃ〜ん?」
「からかわないでよ松本さん!!」
お互い真っ赤になっていて、二人がますます恋人同士に見えて。ただそれが、嫌だった。
ソウヤ君と七海ちゃんが見てくれてる。何も心配しなくていいんだ。
「ソウヤ君達が見てくれてるなら大丈夫。私は最強。」
そう自分に言い聞かせて、私はラケットを握りしめて、コートに向かった。
……私もまだまだ子供っぽいのかもしれない。
自分が見てもらえないことが悔しくて、
愛されてる兄たちに嫉妬して。
何より竜ちゃんに愛されてる彼女が羨ましくて。
私もそろそろ、兄離れしなくちゃいけないのかもしれない。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時