検索窓
今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:74,272 hit

第三十四話 ページ37

Aを忘れると決めてから俺はすぐに行動に移した。
女を見つけるために、俺は行きたくもねぇ学校に顔を出すようになった。

顔はいい方だったから、女に困ることはなかった。
何となく雰囲気がAに似ていると思った女。

何度か話したことのあった女がいた。
どこで知ったのかは知らねぇがソイツは俺と一緒にいたAを見たことがあるらしい。

ソイツには俺がAを好きなことを勘付かれていた。

その女はどうやら兄貴のことが好きらしい。
好きなやつの雰囲気に似ている者同士、お互いを代わりにするという形で付き合った。

「好きよ、竜胆くん。」

この関係は嘘でできている。
俺はコイツを好きではないのだから。

…ただ、何故コイツが兄貴を好きだなんて嘘をついているのか分からない。

態度を見ていれば、何となくわかった。アレは嘘なのだと。

けれど俺は知らないフリをさせてもらう。
この関係が、都合がいいから。

けれど、その女とは長く続かなかった。

「……」

ため息が漏れる。

ベランダから眺める六本木の夜景は好きだし綺麗だけど、見たところで今は気分は晴れなかった。

「竜ちゃん、大丈夫……?この前のことで、まだ落ち込んでるの…?」

心配そうに隣にAが並ぶ。

「いや、大丈夫。どうせすぐ別れるって思ってたし。」

「そう……あんまり無理しないでね。何かあったら私に何でも言って!出来ることなら何でもするよ!」

「お前はホントにカワイイやつだな。」

「えへへ。」

ワシャワシャと頭を撫でてやる。

「お前は学校楽しい?」

頬杖をついてAに聞く。

「うん!七海ちゃんと話すのは楽しいし、ソウヤ君と一緒にウサギの世話するのすっごく楽しい!」

「そっか。なら良かった。ここは冷えるから早く戻ろうぜ。」


「うん!」

「……」

Aは確かに楽しそうにしている。
これは嘘なんかじゃない。それは分かるけどさ……

A、お前、なんか痩せたか……?

最近少し目が赤いこともあるし、どこか違和感を感じる。

今はいじめにはあってないみたいだけどな。

「A、お前も何か悩んでたら俺らを頼れよ。」

「うん!ありがと、竜ちゃん。」

そう言ってから、俺は部屋に戻った。


「私、悩んでるよ竜ちゃん……でもそれは、あなたにだけは言えない。」

第三十五話→←第三十三話



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (58 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
209人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。