第三十ニ話 ページ35
「海めっちゃ久々に来た〜!」
Aははしゃいで海に走って行っちまった。
「あ、おい…!」
追いかけようとしたら俺と兄貴は逆ナンにあった。
しかも押し退けられねぇ位の数。
***
「冷たっ!めっちゃ気持ち〜」
海に来るの久々すぎてヤバい楽しい…!!
綺麗な貝殻とかあったら七海ちゃんにあげよっかな。
一人で遊んでたら……
「あれ?Aちゃん?」
名前を呼ばれて振り向いた先には…
「ソウヤ君!来てたの?」
「うん、Aちゃんに会えるなんて思ってなかった。」
「そだね〜」
聞けば双子のお兄さんと来てるんだって。
よく話に出てきたナホヤ君。
「うちもお兄ちゃんと来てるけどお姉さん達に囲まれて大変なの。」
「うわ、ホントだ…ここからじゃ顔が見れないくらいに人集りが…」
「イケメンだから仕方ないけどね。ねね、ソウヤ君、一緒に遊ぼうよ!ナホヤ君が戻ってきたらナホヤ君も!」
「いいよ。」
一緒に綺麗な貝殻拾ったり、海の中を覗いてみたり、ビーチボールして遊んだり…本当に楽しい。
こういうのも、たまにはいいね。
***
「……」
正直、目の前の逆ナンの女達には興味がない。
兄貴はそれなりに楽しんでるみたいだけど。
それよりも俺は、Aの方に目を奪われていた。
Aが初めて秘密を打ち明けた男がいた。
ソイツと楽しそうに遊んでいた。
二人の距離は物凄く近くて、見ていたくなかった。
けれど、目を離せなかったのも事実で。
二人がまるで、恋人同士に見える。
Aがあの男をどう思っているか分からねぇけど、あの男は絶対にAに惚れている。
Aには今まで迷惑しかかけてこなかった。
だから、Aの幸せを邪魔しない。
あれだけのことをしておいて、Aの幸せにズケズケと口出すほど、俺は
…もしかしたら、アイツの方がお似合いなのかもしれない。
Aを幸せに出来るのかもしれない。
「気になるか?」
小声で隣にいた兄貴が、視線を変えずに話しかけてきた。
「気になるなら、行ってきてもいいけど?」
「…いい。ここにいる。」
その間もズキズキと胸が抉られるように痛かった。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時