第二十七話 ページ28
「はぁ……」
「A、風邪引くぞ〜」
「あ、蘭ちゃん……ありがとう。」
ベランダで一人ため息を付いていたら、蘭ちゃんが隣に来た。蘭ちゃんは上着をかけてくれた。
「…何か蘭ちゃんが優しいと擽ったい。」
「そうか?俺はお前には優しいだろ〜?」
「だって蘭ちゃん意地悪だもん。人形の件、忘れてないよ私。」
「流石俺の妹、粘着質でいつまでも覚えてるタイプだな〜?」
「あんなに泣かされたら忘れないよ。」
「ふぅん…人形で思い出したけどさ、お前はハル君のことはもういいの?」
「…もう忘れた。」
もう、考えたくもない。あんな人だなんて、思わなかったもの。
「そっか。」
少しの沈黙の後、蘭ちゃんは口を開いた。
「今さ、竜胆とギクシャクしてんだろ?良かったらどういうことか教えてくんね?何が切っ掛けとかそれは知らないからさ。」
「…蘭ちゃん…ごめんね、私、蘭ちゃんにまだ言ってなかったけど、二人がいない間にいじめに遭ったの。」
それから私は、竜ちゃんとこうなるまでの経緯をなるだけ丁寧に説明した。話してる途中、何度も辛くなって泣いちゃった。そしたら蘭ちゃんは優しく頭を撫でて、そっと抱き寄せてくれた。
「なるほどな、どういうことか把握できたワ。お前もここまでよく頑張ったじゃん。色々考えて、悩んでたんだろ。」
「うん…」
「兄弟っつっても男だもんな。怖くなる時くらいあるか。」
Aの身にあったことを考えれば、男が怖くてもおかしくないもんな。虐めのこともそうだけど、喧嘩にだって巻き込まれてる。
「竜胆は怖ぇヤツじゃねえよ?竜胆にはナイショで教えてやる。」
「何?」
「竜胆ってさ、しっかりしてるだろ?今でこそそうだけどさ、昔はスゲェ手が掛かるヤツだったわけ。怖がりでさ、夜中に一人で便所行けなかったりとかな。結構よく泣いてたし、弱っちかった。」
「ホント?」
「しっかりするようになったのはAが大きくなってからだよ。弱い所をAは見たことねぇだろ?アレ、必死に隠してただけだから。一回、竜胆がボロボロになって帰ってきたの覚えてるか?」
「うん、まだ私が幼稚園だった時だよね…」
「実はさ、Aが眼鏡かけてからアイツがお前を振ったって知ってさ、竜胆ソイツ殴っちまったんだよな。相手も抵抗してきてボロボロになってたけど。Aに負い目を感じてほしくなかったから理由聞かれてもアイツは口を割らなかった。」
「そうだったんだ…」
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時