第二十四話* ページ25
夜。
「A、お前ホント初心だな〜」
「からかわないでよ蘭ちゃん!」
「兄貴、風呂あがった。」
「あ、竜ちゃん。」
竜胆は眼鏡を外して、上半身裸で髪を拭いていた。
蘭とは違ってゴツゴツした筋肉にタトゥーが映えていた。
最近二人で入れたらしいタトゥー。自分だけなくて寂しいといえば、蘭はAも入れてもいいと思ったが、竜胆が許さなかったらしい。
ボッ…!!と顔を真っ赤にさせてしまったAに吹き出す蘭。状況がよく掴めていない竜胆。
「竜胆、Aはお前の…」
「蘭ちゃん!!それは言わないで!!」
竜胆は疑問符を浮かべながらも部屋へ戻った。
***
「A、ちょっといいか?」
「何?」
竜ちゃんに手招きされて、私は竜ちゃんの部屋に向かった。
「A、お前……」
そう言いかけて詰まる竜ちゃん。
「何か言いにくいこと?」
そう言えば頷いた。でも、やっぱり気になることか何かだからこうして声をかけたのだろうということは分かる。
竜ちゃんがそのモヤモヤを抱えたままは、私は嫌で。
「何かあるんでしょ?大丈夫だから、言ってみて。」
そう言うと、竜ちゃんは少し躊躇いながらも口を開いた。
「悪い…お前らの話、聞いちまった。お前が、虐められてたって話。」
「…え?」
頭が真っ白になる。まさかあの会話を聞かれていたなんて。
「何でお前はそれを黙ってたんだよ。」
何も答えないA。
答えなきゃいけないことは分かっているのに言葉は何も出てこなくて。
ようやく言葉を絞り出せた。小さく、か細い声で。
「…だって、恥ずかしいもの…」
「!!」
そしたらね、不思議と言葉がどんどん溢れてくるの。
「虐められてるだなんて恥ずかしくて、とても言えないわ…例えそれが竜ちゃんや蘭ちゃんであったとしても…」
「アイツには言えるのにか?」
「!!」
本当だ。竜ちゃんの言う通りだ。
ソウヤ君が聞き上手だから?優しいから?
でもそれは兄二人だって同じこと。
「…変なこと聞いたな。ごめん。」
その言葉とともに竜ちゃんはそっと抱き寄せてくれて。
優しい腕の中にいれば、涙はどんどんと溢れていって。
「…いいよ、竜ちゃんが謝る必要なんてないんだから…」
離れようとすればグッと力が強くなった。
簡単には振り解けない力の差を感じて、私は改めて竜ちゃんが男の人であることを感じて、少し怖くなった。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
