第二十一話* ページ22
「ソウヤ君、ごめんね、遅くなって。」
「ううん、大丈夫。」
放課後。今日も二人で飼育当番。この時間だけが学校のなかで唯一、落ち着ける時間。
やっぱり私はまだ人が怖い。心を開いた友達は、ソウヤ君だけだもの。
「今日、白方さんに委員会の仕事押し付けられてたけど…いっつもああなの…?」
「どうしても断れなくて…だめね。私。嫌われたくなくて、断れなくなるの。そしたら都合がいいと思われて、また利用されるって、分かってるのに…昔にね、こんなことがあったの。」
遠くを見るような目で、悲しそうな瞳で。彼女は少し前の出来事を語ってくれた。
「私は家族がいない間、クラス規模のいじめに遭ったの。
私が皆と同じアニメを見ていたらパクリだとか言われたわ。貴方の作った作品じゃないのに…
フルーツバスケットをした時、私が中心になった時。誰か一人は必ずいる物を言ったのに、誰も席を立たなかった。
他にもね。私や私の物を触ったら、笑いながら誰かにその手を擦りつける、俗に言う菌いじめ。
凄く悪質だったわ。
私のすぐ傍を通ったら、私に聞こえるように臭いと大声で言う男の子だっていた。ダンスの時も手だって取ってもらえない。
辛かったわ。すごく。一度、私が自分自身のことを汚いんだって思ってしまったことがあって…自分が嫌になった。
給食が終わる時間にね、後ろの子の席を下げようとして水筒を倒しちゃったの。その男の子は直せって怒鳴るけど、触ったらまたいじめられるって思ったら…汚いって言われると思ったら、怖くて触れなかった。そこで私は自分を汚いって認めてるみたいで。嫌われたくなくて媚びを売ってる自分が惨めで恥ずかしくて…悔しくて情けなかった。心底自分自身を嫌いになったわ。」
「そんな酷いことが…」
「いじめに加担していない子も勿論知ってたわ。だってクラス規模だもの。一人だけ、女の子の友達が助けてくれたわ。その子は私の恩人なの。加担した子達は謝りに来たけれど中には仲良かった友達もいて。その出来事があってからその子と交換ノートをしたわ。そしたら、死にたいって思った事ある?って書いてて、その子はあるんですって。私にあんな事をしておいて、何でそんなことが言えたのかしらね。」
想像を絶した彼女の痛み。何て声をかけたらいいのか…
「だからね、貴方が何の躊躇もなく握手してくれたことが、私は嬉しかった。男の子で初めて、兄さん以外に信頼できる人を、私は見つけたの。」
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
