第二十話 ページ21
「竜ちゃんやっぱ似合う!素敵!」
「そうか?」
「うん!」
あれも似合いそうだしどれにしようか迷っちゃうな〜なんて言ってるA。
「俺はちょっとアッチの棚見てくるワ。」
「はーい!」
数分後、買うと決めた服が何着かあったため、Aの元へ行こうとしたら、Aは一つの服をジッと見つめていた。
レディースもメンズも取り扱う洒落た店。立ち寄ったら大体数着は買うくらい俺も兄貴も気に入ってる店。よく周りからは高いから手が出せないと言われる。
Aは値札を確認して財布を開いて買えるか見ているみたいだった。が、少し残念そうにして服を戻した。
財布をしめて、別の棚に向かってしまった。
多分だけど、今のAはもう晩飯食いに行く位の金しか持ってないと思う。晩飯食いに行こうって言ったのは俺だから奢るつもりでいるのにAの中ではハナからそんな選択はなくて。
俺はAがさっき手に取っていた服と自分用の数着の服を会計に持っていった。
***
「A、買ってきた。」
「買えた?」
「おう。それとこっちはお前のぶん。開けてみろよ。」
「え?…これ、さっき私が見てたやつ…」
「買えなかったんだろ?」
「そうだけど…結構高いよコレ…いいの?」
「お前こそ俺に眼鏡買ってくれたじゃねぇか。あれも十分高いんだし。眼鏡の礼ってことで。」
「じゃあ大切にするね。ありがとう竜ちゃん。」
「ん。」
***
Aと竜胆はお洒落なイタリアンの店に入っていた。
「Aって結構食うよな。」
「やっぱ食べすぎ…?」
「いいや?俺は好きだけどな。」
「竜ちゃん好きならいいや!」
ぶっちゃけ少食アピールしてくる女子よりもこうやって美味そうに食ってる方が俺はかわいいと思うけどな。
実際居たんだよ、そういう奴が。知らねぇよって思うだろ?
「もうそろそろ夏だな。」
「そだね。夏か〜…」
「前はお前、塾で夏祭り行けなかったっけな。」
「そうそう。長いこと体調崩して勉強遅れてた時もあったしね。」
***
去年の夏、Aは塾で夏祭りに行けなかった。
俺らと違ってAは真面目に勉強していた。
俺らを見送ってくれたけど、ホントは行きたかったんだろうな、とか。
Aは甘いもん好きだから、りんご飴好きだし、チョコバナナとか好きなんだよな。でも一番好きなのは綿飴でさ、家帰ったら塾から帰ってきたのにまだ勉強してるAがいて、綿飴やったらすげぇ喜んでた。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
