第十八話 ページ19
「じゃあね、ソウヤ君。また明日。」
「うん、また明日。」
その男と別れてAはこっちに歩いてくる。俺は携帯を弄るふりをした。
「竜ちゃん、お待たせ!」
「ん。帰るか。」
「ねね、竜ちゃん、ちょっと寄り道して帰ろうよ。」
「どこ行くんだよ?」
「服屋!」
「じゃあ兄貴に連絡しとくワ。晩飯も食って帰ろうぜ。」
「やった!」
***
Aと二人で街中を歩く。
隣を歩くAは色んな店に夢中になって目を輝かせている。
「余所見してたら転ぶぞ。」
なんて理由を引っ張り出してはAの手を取る。
「え、私そんなに危なっかしいかなぁ…?」
「まだまだお前は危なっかしいんだよバーカ。」
「でも私には竜ちゃんがいるから大丈夫だね!」
そう言って笑うA。でもきっとそれは俺がお前の兄だからで。
俺はお前の特別な一番になりたいんだよ。
その一番になれなきゃ、意味ねぇんだよ。でも、俺にお前を傷付ける勇気はねぇからどうしようなく苦しいんだよ。
Aは過去に色んなことが起きたから、男が苦手なんだと思ってた。けど、さっきの男に向けてた笑顔は俺や兄貴に向けるものとはまた違くて。
男の嫉妬は見苦しいって兄ちゃんが言っていた。
俺だってそう思う。
男の嫉妬なんてダセェよ。もうガキじゃねぇんだからさ。
でもやっぱりお前が他の男に笑ってるのは面白くねぇ。
笑うなら俺の横にしてほしい。
***
「いらっしゃいませ〜」
「…オイ、A本当にこんな店でいいのか?」
「いいの!ここ安くてカワイイ服いっぱいあるもん!私の服が見終わったら竜ちゃんの服も見に行こ!」
逆に竜ちゃんや蘭ちゃんの服が高すぎるんだよ…なんて、内心思ってる。
「私、竜ちゃん達の隣歩けるような服選んでるんだよ〜」
なんて笑うA。
そしたら顔見知りらしい店員がAに話しかけて、アドバイスをしていた。ちらりと俺を見ては楽しそうに聞く。
「もしかしてAちゃんの彼氏さんですか〜?」
「え〜、違いますよ。お兄ちゃんなんです。」
「お兄ちゃん!?Aちゃんお兄ちゃん居たの!?」
「はい！」
「めっちゃイケメンじゃないですか！」
「自慢のお兄ちゃんなんです!」
自慢のお兄ちゃん、か…
***
店を出ていく二人を見送ると同僚が聞いてきた。
「さっきの子達、兄妹ってホント?」
「みたいよ?」
「でも何だか、お兄さんの女の子を見る目が優しくて、恋人を見てるみたいだったわ。」
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
