第十三話 ページ14
「看護婦さん、」
「ん?何?」
「少年院って、どういうところ?」
「そうねぇ…これからAちゃんのお兄ちゃん達が社会に戻ってこられるように教育する所、かしらね。」
「怖い?」
「まあ、大変だと思うわ。決まり事もそれなりにあるでしょうし…」
「そうなんだ…ねえ看護婦さん、私に教えてほしいことがあるの。」
***
まだ車椅子とはいえ、外に出られるようになったAは、少年院にいる兄二人に面会に行った。
車椅子で時間がかかることを想定して、Aは予定時間より早く部屋に入っていた。
「Aさん。お時間です。」
「あ、はい…！」
***
俺と兄貴はAと面会する為に部屋に通された。
ガラス一枚隔てた先に居たのは、車椅子にちょこんと行儀よく座っているAだった。
顔に絆創膏やガーゼが貼ってある。
傷、残っちまったな…
「蘭ちゃん、竜ちゃん。刑事さんから話全部聞いた。私を殴った人が、死んじゃったって…」
「ああ。お前にあんな事したやつを、許せなかった。A、奴を殺したのは俺だ。竜胆じゃねぇよ。だから責められんのは俺だ。巻き込まれたのはお前の方だ。だから、お前は何も悪くねぇ。」
「蘭ちゃん…」
「…A、兄ちゃん、お前と一緒にいられねぇ。暫く、家には帰れない。ごめんな。」
「竜ちゃん…どれくらい家に帰れないの?」
「さあ。これから分かると思うけど、多分1年くらいだと思う。暫くの辛抱だ。俺らがいなくても、頑張れよ。」
「うん…」
分かってる。辛抱するのは俺の方だ。
お前の傍にいられないなんて、辛くてたまらねぇよ。
「蘭ちゃん、竜ちゃん。私お手紙書くね。返せなくても読んでくれるだけでいいからね。家に帰ってくるの、待ってる。」
「ああ。」
「じゃあな、A。」
「バイバイ。蘭ちゃん、竜ちゃん。」
Aは手を振って、部屋を出ていった。
隣にいる竜胆は名残惜しそうに、Aが出ていっても、向こうを見つめていた。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
