第十二話 ページ13
Aが街に出かけていた時のことだった。
「よぉ。灰谷家の嬢ちゃん。」
「！？だ、だれ…！？」
「お前ンとこの兄貴に仲間がやられたんでな。…それとお前、あの女の娘だな!?あの女に生き写しだ。俺のお袋はお前の母親のせいで死んだ。だから今日会えて嬉しいぜ。」
「い、痛い…！！離してよ！！連れて行かないで…！！」
***
「おい、早く救急車呼べ！死んじまうぞ！」
「ひでぇ怪我だ…」
「可哀想に…子どもになんてことを…！」
Aはボロボロになって、人だかりのある場所に放り投げられていた。
***
「A…！！」
「ご兄弟ですね。彼女はまだ目が覚めません。恐らく数日ほどは…まだ十歳の子供ですので、今は精神的にも肉体的にも過度に疲弊している状態です。」
「クソッ……！！」
A…顔、ボロボロだ…。
あんなに綺麗な肌が、汚れと血が滲んで、痛々しい。
細くて柔らかな髪は切れたりもつれたり…
よくわからねぇ機械や管に繋がれて、苦しそうだ。
あんなにかわいいAだったのに。
何でAにこんなことすんだよ。
Aじゃなくて俺らだけで十分だろ?
「A…！」
「聞いたか竜胆。さっきのナースの会話。Aに手ェ出しやがったのは狂極の連中らしい。ただ直接手を出したのは副総長みてぇだ。」
「許さねぇ…何があろうと絶ってぇに。」
「…行くか。タイマン。」
「ああ。」
その日の夜、俺らは奴らとタイマンを張ることにした。
「行ってくるな、A。蘭ちゃんの帰り待っとけ〜?」
優しく頬を撫でて、Aの額にキスを落とした。
「…行ってくる。お前にこんなことした奴ぶちのめしてくるから…元気になったら、また笑ってくれよな。」
俺はAの頬にキスをして、病室を後にした。
俺と兄貴は奴等とタイマンを張った。
コイツがAを痛めつけたと思うと憎くて仕方なかった。俺が副総長に間接技を決めているとき、兄ちゃんは総長を片して副総長の顔面を執拗に殴った。
「Aの顔を血で染めたんだ。これくらいやらねぇと割に合わねぇだろ？」
決着はついた。
「チームなんていらねぇよ。灰谷兄弟が六本木を仕切る。」
アイツから笑顔を奪うつもりなら、俺が殺す。
六本木を仕切っちまえばおいそれと手は出せないだろ?
A、ごめんな。俺暫くお前のもとに帰れねぇ。
俺と兄貴は傷害致死罪で年少行きだ。
この後、Aに地獄が待ち受けていることなど知らずに。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年9月4日 18時
