第十話 ページ11
「蘭、竜胆。元気でね。」
Aが家に帰ってきた時、リビングから誰かの声がした。
知らない女の人の声。
「…ああ、母さんもな。」
!きっとそこにいる女の人がママなんだ!
「ママ!!」
バン!!とドアを開けて後ろから抱きつく。
振り返った女の人は蘭ちゃんや竜ちゃんに似ててきれいな人だった。
「ママ、会いたかった!」
「!?」
「わっ!!」
振りほどかれて、コケてしまったA。
「あなたに会いに来たんじゃないのよ、A!…もう用は済んだし帰るわ。」
「ママ…?」
「母さん…!兄ちゃん、A頼む。」
「ああ。A、蘭ちゃんと部屋戻ってような。」
「あっ…うん。」
***
「ママ、私のこと嫌いなの…?やっと会えたのに。」
「そんなことないって。ただ面倒くさいんだよ、母さんは。もう今日は疲れたろ?蘭ちゃんと風呂入って寝ようぜ。」
「…ママ…」
「あんま気にすんな。」
とはいっても難しいか。
風呂を済ませてAを寝かすが、昼のことを気にしているのかなかなか眠らない。
「A、蘭ちゃんから眠れるおまじない。」
ちゅ、と音を立てて額にキスをする。
「おやすみ、A。」
「うん。おやすみ蘭ちゃん。」
***
「Aどうだった?」
「落ち込んでたよ。でもちゃんと寝てる。」
「そっか…」
「Aが本当のコト知る時期も、そう遠くないかもな。」
「でも、それをアイツが知ったら…Aはどうなるんだよ。」
「アイツがこの真実を知るのはきっと辛いよな…」
兄ちゃんは目を伏せながら、そう呟いた。
209人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時