第一話 ページ2
灰谷家に産まれた長男、灰谷蘭。年子で産まれた弟の竜胆。
そして新しい家族が増えた。まだ0歳のA。
「この子とも仲良くするんだよ。」
父親が抱くその小さな赤ん坊はとても可愛らしかった。
「はーい。」
4歳年下の妹の頬をつつきながら、蘭は返事をした。
まだ幼い竜胆は眠そうで、返事をしながらも舟を漕いでいた。
***
それから時は流れ、蘭は11歳、竜胆は10歳に、Aは7歳になった。
「蘭ちゃん!おはよう!」
「……」
「あっ、A!寝起きの兄ちゃんに乗っかるなよ!寝起きは面倒くさいんだから……先に朝飯食おーぜ。」
「はーい!」
Aと竜胆は二人で話しながら朝食を摂った。
この家は蘭と竜胆、Aの3人暮らし。
まだ幼い彼らのために、定期的にお手伝いさんが来ていた。
いっつも思うけど、このおうちって、3人で暮らすには広いよね…
Aはご飯を食べながらそんなことを思っていた。
パパは仕事が多いし、よく知らないけど理由があって別のお家で暮らしている。それでも会えるときがあったら来てくれる。
パパは優しいから好き。
でも私、ママに会ったことない。
蘭ちゃんや竜ちゃんはあったことあるみたいだったけど、私は一度もない。
でも、パパにママからだよ、って渡された一冊のノートを大切に持ってるの。
そのノートはね、ママが私に大切にしてほしいことを書いていたの。
ワガママばかり言わない。ぜいたくばっかりしない。
優しい子でいてほしいって。
そのノートに書いてあることをAは忠実に守っていた。
そのため、ワガママを言わない、倹約家になっていた。
いつか会って、お話してみたいな。
会ったことないけど、どんな人なのかな?
今日会えちゃったらどうしよう……
Aは何度もそんなことを思ったが、それは簡単には叶いようのない話だった。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時