第６話 ページ6
翌日。
「っし、行こうぜA！｣
「うん、行こ行こ！｣
今日は余裕を持って出発できた。
Aはいつも呑気で、散歩をしていた子犬など、さまざまな犬に朝の挨拶をしていた。
「犬の言葉やっぱはっきりわかんのか？｣
「うん。ワンちゃんは私の友だちだからね〜♪｣
──
個性把握テスト─個性を利用して体力テストすんのか。Aが得意そうだ。
「A、お前なら楽勝だろ？｣
「うん！！｣
Aは50m走、持久走、立ち幅跳び、反復横とび、上体起こし、長座体前屈において非常にいい成績だった。
ソフトボール投げや握力は劣っていた。
個性が犬、これは非常に有利であった。
そのため、AはB組の個性把握テストにおいて１位を獲った。
「みてみて洋ちゃん！１位よ！わたし、まだまだやれそうだわ！｣
「おう。すげーじゃん。やっぱ個性の扱い上手いじゃん。｣
「うん！｣
Aは頭を撫でられて、嬉しそうに耳としっぽをピコンッ！と振った。
──
個性把握テストは最後の時限だった。解散して更衣室での話。
「A〜、教室戻ろ〜｣
「ごめん！先帰ってて！｣
「りょうかーい。じゃあまた明日ね〜。｣
「うん！また明日。｣
バタンと閉じられた扉。
「…"個性を使って１位"、か…｣
Aはそのままその場に座り込んだ。
今まで体力テストでいい結果残せたことなんてない。力だって劣るし個性を使って本気で走る…それが許されない生身の私じゃ４秒台なんて出せっこない。本当は個性使わなかったら体力だって下だよ。持久走なんてだいっきらい。
反復横とびは滑って転んでたし、筋力だってない。頑張れてたのは長座体前屈だけ。
"おう。すげーじゃん。やっぱ個性の扱い上手いじゃん。"
「…違うんだよ、洋ちゃん…私は個性にすがるしかないんだよ…、個性がなければなんにも出来ない女の子なんだよ…｣
日に日に大きくなっていくコンプレックス。
Aのコンプレックスは今日で更に大きくなる。
個性を活かしてできる種目じゃなくても簡単にいい結果を出していくみんな。
…私みたいな個性がないと何も出来ないような人はどうしたらいいの…。わたし、本当にやっていけるの？
「うう、うううっ、いやだ、もうからかわれるのはいやなんだよ…！｣
Aはあふれでてくる悔しさ悲しさ、どうしようもない不安に怯えて泣いていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜花 | 作成日時：2021年5月9日 12時
