第拾弐話 ページ12
はっとしてバッ!!と眼を開けた。
私は今、寝ていた…!?まさかそんな…!いつの間に…!なんで…!?
いや、そんなことは考えたって仕方ない、今は皆の安否を確認するしか…!
「うーん!うたた寝している間にこんな事態になっていようとは!!よもやよもやだ。柱として不甲斐なし!!穴があったら入りたい!!」
「師範…!」
私は師範から適切な指示を受けて、刀を握り直した。
──
煉獄さんが五両、Aさんと禰豆子、善逸が三両。伊之助が急所を見つけてくれた…!俺も役に立たなければ…!皆を守らなければ!!
激闘の末、骨を断ち、列車は脱線した。
「…!!」
凄まじい断末魔…!横転する…!
「!禰豆子ちゃん、善逸君…!!」
ふたりは気を失っていたが、一応無事だった。それでもまずいわ。早く手当てしなきゃ…!
「そのためにも早く師範たちと合流しなきゃ…。…!」
なに、今の揺れ。それに…空気が一気に変わっていく…
その時の揺れは上弦の参が現れた音だった。
───
「師範…!!」
大きな声で名前を読んだ。振り向いた師範はボロボロだった。
片目は潰れ、きっと内蔵も傷がついてる。
私の眼からはボロボロと涙が溢れた。すると師範は少し困ったように笑ったけど、すぐにまたいつもの安心させてくれるような優しい表情に変わった。
「A、俺は大丈夫だ。待機命令だ、君は手を出さないでくれ。」
そして敵に向き直る。ああなんて格好いい人なの。師範の命令なら、私はなんでもききます。
あなたに従うと決めたから。あなたは信じる力が強いから。あなたがやると決めたなら、私はそれを信じます。
…たとえあなたの命が捧げられることになったとしても。
Aは唇を噛み締めて、強く強く噛み締めて闘いを瞬きせずに見守っていた。
───
結果として敵は逃がしてしまった。
私は師範に駆け寄った。
「師範、師範…!私はあなたの信じるものを、あなたが決めたことを最後まで信じきったよ…!」
私が顔をぐちゃぐちゃにしていても師範は顔ひとつかえない。
「君にとって待機命令は辛いものだったろうに、俺の決断を最後まで信じてくれた。ありがとう。」
そこから炭治郎くんと師範は話をした。
そして師範は私を見た。
「君とは、もう少し長く一緒にいたかった。過ごせたのは少しの間でも俺を愛してくれた。もっと沢山のことをしてあげたかった。」
その優しい声に、私の涙は増すばかりだった。
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作者名:桜花 | 作成日時:2020年11月2日 22時