第拾話 ページ10
「そこ、もっと強く踏み込め!そうだ!」
ゾロの稽古はかなり厳しいものだった。
それでもAは弱音を一切吐かず、懸命に刀を振り続けた。
稽古が終わってから彼女はガクッと膝をついた。ボタボタと汗が落ちていたが、全集中の呼吸常中のおかげでなんとか呼吸困難は避けられた。
「もっと、強くならないと…必ず、彼奴を殺してやる…人喰い鬼…!」
…コイツは確か14歳だって言ってたな。いつから刀を持ち始めたかは知らねえが、それだけ長い年月、ここの領主…その人喰い鬼を討つために戦ってきてるんだな。
ぎゅうっと音が聴こえた。それはAが悔しそうに両手で地面の土を握りしめた音だった。
「私も、ゾロさんみたいに体格が恵まれていたらなぁ…!もっと強くなれるのに…!」
ゾロはしゃがんで彼女の頭に手を置いた。
「なあ、俺はお前がどれだけの苦難に見舞われてきたか、どれだけの苦戦、激戦を重ねてきたかは知らねえ。だが、体格が良いからって勝てるわけでもねぇだろ。戦略とそれに見合う実力と忍耐がありゃ充分だ。お前は今まで屈せず戦い抜いてるんだろ。それならお前は弱くねえ。前だけをみて、ただ勝つことだけを考えろ!」
「!!はい…!」
──
その日の夜、Aのもとに手紙が届いた。鬼舞辻無惨からだ。内容としては、彼女のもとに今日は鬼を差し向けないから屋敷で戦いに来いというものだった。
彼女は背中に日輪刀を背負って家を出た。
彼女は剣士、相手が言ったことを了承し、一騎討ちだと思い、やっとこの時が来たと、そう、信じていた。
早くこの島を助けることで頭がいっぱいだった。
…鬼舞辻無惨が剣士の信じるそれを簡単に踏み躙る者で、罠だというのに。
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作者名:桜花 | 作成日時:2020年5月12日 23時