第拾弐話 ページ12
Aはかなりの興奮状態にあった。
何故だろう。脚にすごく力が入る。そのまま瞬きのうちに無惨を天井に刺した。
私の大切な人、紫の蝶の髪飾りをつけた人…誰だっけ。その人が使っていた呼吸の…蛇のように四方八方にうねる技…!!
この大切な人とは彼女の前世の師範、胡蝶しのぶという女性。Aが呼吸を使ったり鬼の弱点を知っていたのは、前世の記憶の名残であった。
花の呼吸 伍ノ型 徒の芍薬─!!
「詰まらぬ者だ。…このまま惨めに無様に散れ。」
「!!」
ガキン!!と音がして、刀が折れた。
その声と共にAのつけていた青色の蝶の髪飾りが壊れた。…そして彼女の左腕がちぎれた。
ああ、せっかくお揃いだったのに…
Aは走馬灯をみていた。厳しくも優しい、姉のような人。髪をくくってもらってた。
あの子は、誰だっけ。無口な女の子。コイントスでいつも物事を決めていた。
ゆっくりと眼を閉じると思い出される想い出。
どうして舞い落ちる花びらを誰もみないの?生きている、綺麗な花にしか眼を向けないの?と思ってきたけれど、そっか、もう役目を果たしたからなのね。新しいものへと継がれていくから。じゃあ私は、哀れな花びら。生きていたときは、一輪の花。
ごめんなさいゾロさん、私死ぬみたい。
いやだなあ。生きたいよ。ずっと切っ先を彼奴に向けてきたのに。今だって死にそうなのに、刃先はずっと彼奴に向いたままだ。
花の呼吸で、彼女の周りは花びらが美しく舞う。それが優しく彼女を包む。
そのとき、彼女の首に、金色の美しい蝶が飛んできた。
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作者名:桜花 | 作成日時:2020年5月12日 23時