last love (ページ3)

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「歌手に、なりませんか。」

目玉が落っこちそうだ。
この女、僕に向かって歌手にならないかって。
確かに。
確かにそう言った。

「無理です。もうたくさんだ。オーディションを受けても落ちる。何故なら僕になんの魅力もないから。」
「...」
「あんた、どっかの売れない事務所の奴だろ？見る目もなく俺を落としそうだ。」
「...」
「いかにも。そういう目をしてる。その糞まみれの人間を見るような目。」
「...」
「歌手になんかなれない。なりたくない。」

どうした。僕。
いつもの感じを取り戻せ。
落ち着け、落ち着け。
こんなの八つ当たりじゃないか。

チャンスをくれたのに。
それを逃すのか?
もう強がるのを止めたらどうだ。簡単だ。
本当の事を言えばいいんだ。

「...馬鹿にしてんだろ。こんな汚いコンビニで働いて、可哀想な奴だって思ってんだろ。」
「思ってなんかいません。だって人それぞれでしょう。このコンビニを私みたいに好きって人もいる。」
「違う訳ない。嘘をつくのは得意だけど本当の事を言うのが苦手なのが人間だ。あんたも、」
「それはあなたが過敏に感じ取り過ぎるだけです。人の思ってる事なんて知らなくていいのに。」
「...」
「あなたは馬鹿みたいに人の視線を気にしてる。本当に馬鹿みたい。」

人の視線を気にしなきゃ。
成功なんて掴めないのに。