第三十一訓 ページ32
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────────日がすっかり落ちた頃
真選組の道場にはまだ灯りが付いていた。
床に膝をつき、ぜいぜいと肩で息をする隊士達に対し、息ひとつ乱す事なく余裕の表情を浮かべる沖田の姿。
「……聞いてねえよ、沖田隊長まで参加するだなんて」
「俺達があの人に敵うはずがねえ……」
意気消沈の中、ふらりと立ち上がったひとりの隊士。
「ま、まだまだ！」
立っているのがやっとの体で木刀を構え、沖田をキッと睨みつける。
「沖田隊長はずるいです。
いつもAちゃんを独り占めにして……
俺は本気でAちゃんが好きです。
ひやかしのつもりなら、俺にください」
ポーカーフェイスが崩れる事はなく、相変わらず彼の真意はわからなかったけど、
だけど少しだけ、怒っているように感じた。
「沖田隊長、あんたまさか……」
隊士の言葉を遮る様に、勢いよく開く襖。
「その勝負待った！」
声の先にはぜいぜいと肩で息をするAの姿。
「Aちゃんがどうしてここに？！」
「もし副長にバレたら……」
「そしたら皆で切腹しよう」
Aは悪戯にニカッと笑ってみせた。
皆と同じ気持ちを返すことは出来ないけど、まことの気持ちにはまことの気持ちで返したい。
気持ちに応える事ができない分せめてこのくらい……
「でもAちゃん、残ってるのはもう……」
言いかけた隊士達の視線の先には木刀を肩にかついだ沖田の姿。
「げ、沖田さんがどうしてここに」
「景品自らノコノコとご苦労なこった」
なんでこの人ここにいるの？？？？？？？
場違いにも程があるだろォ！！
え待って、実は私のこと好きだったとか？
馬鹿かッ！それはないでしょありえないッ！
何考えてんだこの男おおおおおお！！！
ひとりで百面相を繰り広げた末、Aはごくりと喉を鳴らして覚悟を決める。
「沖田さん、もしかして……」
神妙な面持ちで、沖田の瞳を真っ直ぐに見つめ
「私の事、好き……なんですか？」
「うぬぼれんな」
勇気を振り絞ったその質問に、沖田さんは食い気味でそう答えた。
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作者名：百瀬 | 作成日時：2020年7月11日 0時
