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第二十八訓 ページ29

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ここがザキの言ってた廃寺院……

瓦は剥がれ落ち、草木が生い茂っている。

Aは気配を殺し、建物へと近づく。



(まさか真選組に女隊士がいたとは…)

(俺の事を家族の仇だと言っていた…)



今にも崩れそうな建物の中からひそひそと話し声が聞こえる。



奴の声だ.......



背中をつたう汗が冷たい。

人を殺める事、己が死ぬ事、その恐怖心からカタカタと小さく震える身体を強引に抑えつける。



たとえ殺されようが必ず刺し違える……



Aの瞳は殺意に満ち溢れていた。



いざ建物に踏み込もうとしたその時



────ぐいっ

「!?」



背後から伸びてきた腕に口を塞がれる。



……誰っ!!!!



(落ちつけA)



じたばたと暴れるAの耳元で囁かれた自分の名前、聞き覚えのある声にハッとする。



なんでここに.......



沖田と土方、それに山崎。
三人の顔をみたら自然と肩の力が抜けた。



月が雲に隠れ、辺りが真っ暗になる。

土方と沖田は勢いよく建物の中へと飛び込んで行った。



私も……!



しかし、誰かが腕を掴んだまま離さない。
振り返ればそこには首を横に振る山崎。



「御用改である!真選組だァ!」



建物の中からは刀がぶつかりあう音と浪士の悲鳴だけが聞こえてくる。



しばらくするとさっきのが嘘のように静まりかえる空間。

暗闇に慣れてきた私の目にうつったものは、数人の浪士の死体と、まだ息のある仇の姿だった。



「とどめはお前がやれよ」



土方の言葉にAはこくりと頷くとゆっくりと刀を引き抜く。



「覚悟ッ!」

「ぐああぁあぁぁああぁ……ッ!」



断末魔の叫び声と共に浪士の腕だけが床を転がる。

苦しむ浪士の姿をAは冷たく見下ろしていた。



「何故…っ、何故殺さない!」

「死んで楽になんてさせない」



そう言ってAは自分のハンカチで浪士の傷口をきつく結ぶ。



「この傷を一生背負って生きていけばいい」



男は一瞬驚いた様な表情をみせると、フッと小さく笑い「あまいな」と一言呟いた。



そして、Aの刀を奪い取り



「「─────Aッ!!」」



斬られるッ!



ぎゅっと目をつむるA。
その場の誰もが彼女の死を覚悟した。



しかし.......



「.......なんで」



浪士は自ら腹を切り命を絶ったのだ。






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作者名:百瀬 | 作成日時:2020年7月11日 0時

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