七左 ページ7
*悪夢をよく見るようになった。自覚したのが数日だが、実際には其れ以前から続いていたような気がする。溢れ返る既視感を不審に思っていれば、或る日突然にするすると謎が解けたのだ。
悪夢には必ず江雪左文字が出る。自覚した当初は大した接触も無く、夢を見ていた時間も短かった。然し日を重ねるにつれ、彼は本性を現すように刀を構え、私を何処迄も追い掛けて来るのだ。最初は上手く逃げ切っていたのだが、次第に夢を見ている時間が長くなり、今日は首を飛ばされる寸前で飛び起きた。
「此れ以上苦しめたくないのです。……貴女も、私自身も」
目覚める直前に彼は言う。
冷や汗が伝う首を掌で拭っていれば、悔しそうに青痣が疼く。彼に捕まってしまえば全てが終わるような気がして、何としてでも今迄逃げ切って来た。八時間程睡眠を取った筈が、疲れが溜まる一方で日常生活でも支障をきたしている。足が張る感覚を不愉快に思いながらも身体を起こして、登校する準備を進めていれば特徴的な低声が呼ぶ。俯かせていた顔を上げれば、パソコン画面に表示された江雪と目が合った。喉が攣るような悲鳴を上げて素早く電源を落とし、厭に鳴る左胸を押さえ付ける。掌に伝わる不規則になっていく鼓動に益々奥歯が鳴った。──就寝前にはパソコンの電源は落としているのに。そんな事が幾度も見受けられた。
以前、本丸画面の受信箱が上限に達している事に気付き開いてみた処、全て江雪左文字で、一振も受け取らぬ儘電源を付け直せば、まるで何も無かったかのように受信箱が空になっていた事があった。其れから幾度近侍を変えようが次にゲームを開始する頃には、何故か元に戻っている事もあった。
「……何で、江雪ばっかりこんな事があるンだ……？」
玄関先でポツリと呟く。其れに答えるように何処かで又、あの耳鳴りが鳴り出したような気がした。
踵を踏みながら靴を履き、数歩歩き出しながら爪先をトントンと鳴らしていた私は、違和感に気付く。……片方の足だけ靴が上手く入り込まない。土付かずから爪先にかけて、何かが引っ掛かっている。背筋に走る悪寒のような物を感ずるが、上半身を俯かせて靴を脱いだ。寝起き特有の視界のぼやけを正すように瞼を擦りながら、靴の中を覗き込む。──刹那に溢れた紺青の何かに私は腰を抜かした。
「ひッ──」
大量の長髪。
慌てて抜き取ろうとするが其れ処か私の指に絡み付いて来るようで気味が悪い。千切るように抜き取って其の場から逃げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 396人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コウ(プロフ) - 卯月さん» コメントありがとうございます！何度か読み返して、描写が上手く伝わっていないのではと不安に思っていたので、その言葉を見て安心しました。次作も頑張って更新進めたいと思います！ (2017年10月1日 23時) (
レス) id: bfc9344f18 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - 面白かったです！描写が丁寧で、凄いなーとか思いながら読んでました！次作も頑張ってください！！ (2017年10月1日 23時) (レス) id: 58c246c3a9 (このIDを非表示/違反報告)
不知火 - はいっ!大丈夫です！更新頑張って下さい！ (2017年6月28日 22時) (携帯から) (レス) id: 0a98efea53 (このIDを非表示/違反報告)
コウ(プロフ) - 天宮さん» 前作からコメントありがとうございます！更新なるべく早く出来るように頑張ります！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 2e6af04341 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - うおおおおおお！新連載ですね！いつも楽しんで読ませて頂いてます。更新頑張って下さい！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 571fb048dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：コウ | 作成日時：2017年6月16日 0時
