六左 ページ6
彼女は、筆箱から飛び出た鋏で利き手を軽く切ってしまったらしい。丸めの刃先に付着した多量の血は、まるで故意に刃を埋め込められたようで厭に寒気がした。
放課後の部活動には参加する気分にはなれず、顧問の目を盗んで帰路を行く。帰ったらゲームでもしようと予定を企てていると、ふいに又、あの視線を感ずる。先程よりも粘着質な気味の悪く、振り返ってみるが辺りに人どころか雀さえ居ない。余計に恐怖に怯える羽目になってしまった。自宅迄、そう遠くなく視線を戻して全速力で駆け出す。
──背後から、金属音と共に誰かが私の名を呼んでいる。
玄関の扉を勢い良く閉めて自室に閉じ籠ると、制服の儘、ベッドに凭れ込んだ。其の途端にゲームのBGMが部屋中に響きだしたので、驚愕のあまり飛び跳ねてしまった。スリープ状態にしておいたパソコンが音源だと気付くと、私はほっとしてから電源を入れてゲームを再開する。一度更新し直して、ログインボイスは誰なのかと胸を高鳴らせていれば──聞き飽きる程耳に染み込んだあの途切れ途切れの低声が、鼓膜を厭に揺らした。
「あれ、江雪だけ疲労回復してない」
ゲーム開始直後、私は部隊長に設定し放しであった江雪に溜っていた疲労が回復されていない事に気が付いた。ゲーム自体を放置して約二十時間が経過しているにも関わらず、第一部隊の刀剣男士全てが
「えぇ、何でだよ……。触ってもないのに。無課金勢だからアイテムは使いたくないんだけど」
後頭部を掻いては、思った以上に面倒臭そうな声が零れた。
自然に疲労回復する迄、部隊長である江雪の代替を探そうと所持刀剣一覧を開く。首に激痛が走った。外部から鋭利な刃物で裂かれるような感覚と同時に、何者かが気道を圧迫するような狂気じみた感覚がする。脳髄に己の苦しげな途切れ途切れの、動物の鳴き声かと疑う声が響いて身体が震えた。
もう替えたりしない、許して、と無意識に叫んだ気がしたが、一体誰に向けてなのか曖昧であったが私は編成画面を閉じ、部隊長の江雪を確認すれば疲労はまるで最初から溜っていなかったかのように跡形も無く消し去っている。
出陣を済ませ、部屋にある鏡をふと見詰めると首は青痣の手形が張りついていた。
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コウ(プロフ) - 卯月さん» コメントありがとうございます！何度か読み返して、描写が上手く伝わっていないのではと不安に思っていたので、その言葉を見て安心しました。次作も頑張って更新進めたいと思います！ (2017年10月1日 23時) (
レス) id: bfc9344f18 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - 面白かったです！描写が丁寧で、凄いなーとか思いながら読んでました！次作も頑張ってください！！ (2017年10月1日 23時) (レス) id: 58c246c3a9 (このIDを非表示/違反報告)
不知火 - はいっ!大丈夫です！更新頑張って下さい！ (2017年6月28日 22時) (携帯から) (レス) id: 0a98efea53 (このIDを非表示/違反報告)
コウ(プロフ) - 天宮さん» 前作からコメントありがとうございます！更新なるべく早く出来るように頑張ります！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 2e6af04341 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - うおおおおおお！新連載ですね！いつも楽しんで読ませて頂いてます。更新頑張って下さい！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 571fb048dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コウ | 作成日時：2017年6月16日 0時
