五左 ページ5
「もうAちゃんなんか知らない」
大袈裟に机を叩いてから、周囲で様子を眺めた儘口出しする事も無かった級友達を引き連れて何処かへと、女友達は行ってしまった。否、友達と呼んでも良いのかと首を傾げる程度には浅はかな関係の級友の一人の少女である。
三時限目を終えた休憩時間の事だった。
男友達が不在の席に座り、頼んでもいないのにまるで友達相手のように馴れ馴れしく話し掛ける彼女と些細な喧嘩をした。級友となったのは今年で初めてで、まともに会話さえ無かった癖に絡んで来る彼女に苛立ち、素っ気無く返答し続けていれば、終いには有りもしない男友達との仲を揶揄われてつい、私は手を上げてしまったのである。此れに関しては何も悪くない。……抑もヲタには二次元と云う恋仲が居るのだ。
年頃の女子は何事も恋愛と繋げたがって不愉快だ。故に男友達との絡みが多いと云うのに、其れさえ喚かれるのは如何したら良いものか。
若干又苛立ちながら、伸びをして仰け反る。先程見ようともしなかった天井が視界を埋め尽くした。一度瞼を閉じ、再度見上げれば赤い手形が幾つも張り付いている。暫く固まっていると、真一文字の削られたような跡さえ発見した。気味悪さに教室を飛び出して、四時限目の開始の合図が鳴るまで戻る事もしなかった。
*
悲哀に満ちた表情で彼は私を見下ろしている。
何時もの見慣れた景趣の本丸。座布団の上に正座をした私の眼前には、抜刀された太刀がある。刃先は赤黒い物がこびり付いていて、とても不愉快だった。
「此れで二度です。私は、貴女が苛立った時に他人を打つ癖が嫌いです。……然し、貴女が傷付くのは、もっと嫌いなのです」
打った手は痛いでしょう、と鞘を持った儘彼は私の利き手を撫でる。痛む事も無くなった手をひたすらに撫でる彼を見て、大袈裟だと思った。
ふと気付けば、空が暗くなっていく。其れにつれて彼は無慈悲な目を向けた。太刀を強く握り締めてから刃先を私の首元へ寄せる。立ち上がろうとした足が、やけに重く感ぜられて身動きが出来ない。──斬られる。
「……嗚呼、首と身体を離してしまえば……」
傷付く事も、傷付ける事も無い。トン、と云う音を聞きながら視界が歪んでいった。
*
「痛ッ」
遠方から聞こえた悲鳴に目覚めた。四時限目の最中、私はぼやけた視界で悲鳴が上がった方に目を向ける。女友達の利き手から血が流れていて、私ははっと首元に触れたが、特に如何と云う事も無かった。
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コウ(プロフ) - 卯月さん» コメントありがとうございます！何度か読み返して、描写が上手く伝わっていないのではと不安に思っていたので、その言葉を見て安心しました。次作も頑張って更新進めたいと思います！ (2017年10月1日 23時) (
レス) id: bfc9344f18 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - 面白かったです！描写が丁寧で、凄いなーとか思いながら読んでました！次作も頑張ってください！！ (2017年10月1日 23時) (レス) id: 58c246c3a9 (このIDを非表示/違反報告)
不知火 - はいっ!大丈夫です！更新頑張って下さい！ (2017年6月28日 22時) (携帯から) (レス) id: 0a98efea53 (このIDを非表示/違反報告)
コウ(プロフ) - 天宮さん» 前作からコメントありがとうございます！更新なるべく早く出来るように頑張ります！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 2e6af04341 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - うおおおおおお！新連載ですね！いつも楽しんで読ませて頂いてます。更新頑張って下さい！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 571fb048dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コウ | 作成日時：2017年6月16日 0時
